『ジュラシック・ワールド/炎の王国』新監督がもたらした“新風” ゴシック・ホラーな恐竜パニック

 さらに本作で着目すべきは、倫理の問題であろう。島の噴火を生き延びた恐竜たちの権利、俗にいうアニマル・ライツ=動物の権利という部分に焦点を絞っているわけだ。元々は娯楽目的で、人間によって復活させられた恐竜たちだが、パークが崩壊した今、恐竜たちは人間のエゴと強欲によって、兵器や医学の分野で用いられようとする。非娯楽目的での恐竜利用を描いた本作は、単なるパニックホラーというジャンルを飛躍し、道義的なストーリーを描き出している。さらに恐竜を再生させることとなったバイオテクノロジー技術、すなわちクローン問題に関しても、生命の倫理やクローンに対する人権など、極めて現実的な問題にも迫った内容となっている。

 バヨナ監督はそうした新風を吹かすと共に、旧作からのファンサービスも忘れずに取り入れている。それがとくに顕著なのが、ジェフ・ゴールドブラムの再登板であろう。ジェフといえば、『ジュラシック・パーク』とその次作『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997年)において、カオス理論の専門家、イアン・マルコム博士を熱演。その風貌と口ぶりから、シリーズ屈指の人気キャラクターとして、その地位を保っている人物だ。ジェフ・ゴールドブラムは、本作でもイアン・マルコム博士役として再登場。彼は、連邦議事堂での審問会シーンに登場し、メインのストーリーには関与しないものの、久々の再演に往年のファンを喜ばせた。

 マルコム博士の登場シーンはカメオ的で、ほんのわずかであるが、次作『Jurassic World: Dominion(原題)』(2021年公開予定)では、マルコム博士の本格復帰が告知されている。『Dominion』でシリーズの監督に復帰するコリン・トレヴォロウは、そのほか『ジュラシック・パーク』からアラン・グラント博士役のサム・ニール、エリー・サトラー役のローラ・ダーンの復帰も宣言しており、クリス・プラットら新キャストとの共演が期待されている。また、監督は、旧作からの復帰メンバーに関して、カメオ出演のような短い登場ではなく、物語の根幹にかかわる重要なキャラクターとして、再びスクリーンに姿を現わすことを強調している点も興味深い。

 彼らがどのような経緯で再登場するのか、非常に興味をそそられるところだが、地上波初放送される『ジュラシック・ワールド/炎の王国』で、生き残った恐竜たちの運命を見届けよう。

■Hayato Otsuki
1993年5月生まれ、北海道札幌市出身。ライター、編集者。2016年にライター業をスタートし、現在はコラム、映画評などを様々なメディアに寄稿。作り手のメッセージを俯瞰的に読み取ることで、その作品本来の意図を鋭く分析、解説する。執筆媒体は「THE RIVER」「IGN Japan」「映画board」など。得意分野はアクション、ファンタジー。

■公開情報
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』
日本テレビ系にて、7月24日(金)21:00〜23:24放送
※放送枠30分拡大・地上波初放送・本編ノーカット
監督:J・A・バヨナ
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ
出演:クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ジャスティス・スミス、ダニエラ・ピネダ、ジェフ・ゴールドブラム
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