初のオンライン映画祭も刺激的な内容に PFFが若手作家の登竜門として果たしてきた役割

PFFが果たしてきた役割を振り返る

作家の第一歩を観られる貴重な機会

「PFFオンライン」第1夜に登場した李相日と妻夫木聡

 PFF2017年に「一般社団法人PFF」を設立し、組織体制を変更、親会社のぴあなど3社をオフィシャルパートナーとする形で独立した組織となった。映画祭の開催と並行して海外の有名監督の特集上映なども積極的に行ってきたPFFは、さらに活動の幅を広げようとしている。オンラインPFFも新たな活動領域を生み出す動きの一環だろう。

 若手作家の作品や、人気監督の自主映画時代の作品は滅多に観る機会がない。PFFは特集上映などでそうした作品の鑑賞機会を創出してきたが、オンラインPFFによって、それらの貴重な作品をネットで観られるようになった。今後もオンラインPFF映画祭以外にも、映画講座や名作、貴重な自主製作を配信していく計画だという。

 第1回の開催である今回は6組の上映+トークショーを実施。上映作品はいずれもなかなか観られない貴重な作品ばかりだ。

 初日は『怒り』や『フラガール』の李相日監督のPFFアワードグランプリ作品『青~chong~』と、オムニバス映画の一編として作られた『1001のバイオリン』の配信、李監督と妻夫木聡のトークという構成だった。

 『青~chong~』は、16ミリフィルムで撮影された李相日監督の日本映画学校時代の卒業制作作品だ。PFFアワードでグランプリ含む3部門を受賞した作品で、監督自身のルーツである朝鮮高校での青春模様を描いた。筆者は日本映画学校に李監督と入れ替わりに入学した世代なので、『青~chong~』はとても馴染み深い作品でこれまで何度も観ている。入学早々に授業で観てクオリティの高さに衝撃を受けた。DVDも絶版、配信もされていないので、今回のオンライン上映は大変貴重な機会。ちなみに、青空と白い雲のコントラストの美しい映像が印象的なのだが、撮影監督は『blank13』や『愛の渦』などの撮影監督を担当している早坂伸氏だ。

 今回のオンライン映画祭で配信された作品は、プロとして活躍する監督たちの第一歩と言える、荒々しくむき出しになった才能を堪能することができる作品ばかりである。PFFの長い歴史の中で数多くの優秀な作品が入選を果たしてきたが、オンラインPFFはそれらのアーカイブを生かす格好の場となれるのではないだろうか。

 作家たちの第一歩の作品を観るのは、映画を志す若者にとって大きな刺激になるはずだ。その才能の輝きに嫉妬することもあれば、あの有名監督も最初はこの程度か、あれぐらいなら自分でも撮れると(根拠のない?)自信を持つ者もいるだろう。作家は処女作に向かって成熟していくという言葉もあるが、PFFで選ばれた作品には、才能のプリミティブな姿がある。プロの世界で作られた洗練された作品とは異なる魅力が満載だ。

 また、映画配信後のトークショーも聞き応えのある内容だった。監督と縁の深い俳優が聞き役で、彼ら・彼女らの創作の原点やエネルギーの源泉、表現することへの原初的な欲求に迫る内容で、商業媒体などのインタビューとは一線を画す内容になっている。いずれのトークショーも、やはり映画の道を志す若い人を刺激するだろう。

 これらの映画とトークショーを観ていると、筆者ですら創作意欲が湧いてくる。映画の道を志す若い人にはぜひ観てほしいし、これからの人生に迷っている人にも何かしらの刺激があるはずだ。

参照

一般社団法人PFF
PFF・オンライン映画祭「"ひと"が映画をつくる」開催決定!
PFFの歴史

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

■開催情報
「PFF・オンライン映画祭」
7月4日(土)~9日(木)連日21:00〜6夜連続ライブ配信にて開催
公式サイト:https://pff.jp/jp/news/2020/06/pff_online2020.html

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