『MIU404』綾野剛×星野源の正反対バディが愛おしい! 上がりに上がった期待を超える第1話に

『MIU404』正反対バディが愛おしい

刑事ドラマらしい見ごたえも

 もちろん、刑事ドラマの王道とも言える魅力もしっかりと抑えている。それは正反対な性格の2人がバディを組むというもの。直感や感情で動く“野生のバカ“こと伊吹(綾野剛)と、「自分も他人も信じない」と理性的な志摩(星野源)。

 もちろん野生タイプの伊吹はルールや制度に縛られて動けない機捜の体制を不満に思う。どんなに初動がいい動きをしても、逮捕という醍醐味を手にすることができるのは自分ではない別の人。よくできても褒められず、できなければ責められるポジションともいえる。

 「張り合いがない」とぼやく伊吹に「そういう仕事です」と戒める志摩だが、その目には何か思うところがあるようで……。そんな相反する2人が、犯人を目の前にして絆が育まれていくのが、刑事ドラマの見どころだ。

 あれほど、かつての名作刑事ドラマのように派手なドンパチはないと視聴者に認識させた後に、ド迫力なカーチェイスを見せてくれたのは圧巻だ。さらに「日本の警察は拳銃を抜かない」という会話が、伊吹の犯人を追い詰めるシーンで効いてくる。

 強い正義感ゆえに撃ってしまうのだろうか!? と思わせて、「チェンジあーんどソウル!」と手にしていたのが拳銃ではなくおもちゃのステッキだったというオチもあっぱれ。綾野と星野による迫真の演技があればこそ緩急が際立つ見事なシーンだった。

 ちなみに、伊吹と志摩だけでなく、飲みニケーション世代のベテラン班長・陣馬(橋本じゅん)とキャリアの新人・九重(岡田健史)の凸凹コンビの今後にも注目したいところ。ジェネレーションギャップや官僚制度の問題も斬っていくのではと期待が高まる。

 ささいなやり取りもすべて痛快な結末に繋がっていく脚本力。その計算を最大限に活かすセンス抜群のカメラワーク。そして物語の中で語られているように、どこも限られた予算に苦しめられている中、視聴者が「わっ!」と目を丸くするようなアクションを見せてくれる潔さ。脚本家、監督、プロデューサーの「絶対おもしろいやつを作ってやる」という気概を感じられた第1話。

 新型コロナウイルスの影響で、ストップしてしまったエンタメ業界。本作のスタートで、改めて新しいドラマが生み出されるワクワクを思い出すことができた。「張り合いがない」と言っていた伊吹が、クライマックスでは嬉しそうに「機捜って、いいな。誰かが最悪の事態になる前に、止められるんだよ。超いい仕事じゃん」と笑顔でつぶやく。

 その言葉は、そのまま「機捜=エンタメ」に置き換えても聞こえる気がする。誰かが現実に打ちひしがれて最悪な状態になってしまう前に、ちょっとだけ違う世界を見せて止めることができる。超いい仕事じゃん、と。まだ社会は混乱が続くが、少しずつ動き出したエンタメを「張り合い」にしていこう。次週はどんなふうに私たちを驚かせ楽しませてくれるのか、ワクワクしながら待ちたい。

■放送情報
金曜ドラマ『MIU404』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、渡邊圭祐、金井勇太、生瀬勝久、麻生久美子
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、加藤尚樹
プロデュース:新井順子
音楽:得田真裕
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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