中村倫也、再放送ラッシュで見えた“自由自在さ” 『水曜日が消えた』では1人7役を演じ分ける

中村倫也、再放送ラッシュで見えた自由自在さ

 変幻自在にどんな役も演じ分けられる「カメレオン俳優」の域を超えて、「ミミックオクトパス俳優」「ヒョウモンダコ俳優」を自称する中村倫也。その活躍は自他共に認めるところだが、このコロナ禍で出演作ドラマの再放送ラッシュに見舞われ、改めてその圧倒的な演技力を見せつけられることとなった。

 中村にかかれば、役の演じ分けという次元ではなく、全く別人格になれてしまうのだ。「演じる」というよりも、その役柄をすっかりそのまま「纏えてしまう」のが、彼が唯一無二たる所以だろう。それも不思議でならないのが、中村は「色気スイッチ」のオンオフさえも自分で切り替えられるようだ。どうしたって香り立ってしまう、隠しきれないものの代表格が「色気」という正体不明の魅力であると思うのだが、その「色気」さえも出し分けができ、自由自在に放出させたり、瞬時に消してしまえたりできるのだからこちとらお手上げである。

『美人が婚活してみたら』(c)2018吉本興行

 YouTubeで配信されている「中村さんちの自宅から」の彼が“役を演じていない通常モード”だとすると、やはり基本的に標準装備として湿り気のある色気を宿しているのが中村本人。にも関わらず、映画『美人が婚活してみたら』では恋に奥手で童貞臭の漂う商社マン役を演じてのける。再放送された『スーパーサラリーマン左江内氏』(日本テレビ系)での警察官の刈野役も、色気の「い」の字もないお調子者キャラだった。

 かと思いきや、彼らとは対極の存在を『凪のお暇』(TBS系)のゴン役で見せてくれる。ヒッピー風のどこか掴めない存在で、関わる女性全てを狂わせてしまう“メンヘラ製造機”。作中では、そんなゴンの中で本気の恋愛感情が芽生え、自分自身に対峙していく過程も演じられていた。

 そして、同じくどうしたって滲み出てしまい隠し切れないものに「知性」というものも挙げられると思うが、中村の手にかかればこれもコントロール自在だ。THEインテリキャラ役だったのは『ホリデイラブ』(テレビ朝日系)での公認会計士でモラハラ夫の井筒渡役。あの見るからに神経質で繊細そうな雰囲気、常にひりついた空気感までも元々の性質かのように醸し出せるのだからお見事である。

 同じくインテリはインテリでも、元ヤンの高校教師を演じたのは『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)での山下一真役。荒削りで、ワイルド、モラハラ夫とは違う意味でのドSっぷりを発揮した。

『美食探偵 明智五郎』(c)日本テレビ (c)東村アキコ/集英社

 また放送が再開された主演ドラマ『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系)でも老舗百貨店の御曹司ながら探偵事務所を営む変わり者かつ切れ者を演じている。これまた独自の審美眼、美的感覚を持ち合わせたマイワールド内で生きる浮世離れした存在である。

 これだけ幅広い、というよりも正反対の存在を体現出来てしまえる彼は、役ごとに「顔も変わる」。前髪の有無や髪型、服装などの影響はあるにせよ、そんなことよりもパーツの配置具合まで違って見えるから本当に不思議だ。中央に集中的にグッと寄ったパーツ配置の時もあれば、全体的にほんわかしてパーツごとの主張が薄まる時もある。

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