『GREAT PRETENDER』と『コンフィデンスマンJP』、古沢良太脚本にみるアニメとドラマの特性

 その後は飛行機によるエアレースを題材にしたCase2(6~10話)、贋作を題材にしたCase3(11~14話)と、1エピソードあたり4~5話のペースで話が作られていく。1話20分弱なので、毎回80~100分ぐらいの尺だが、これも他のアニメ作品とは違う独自の手触りを生み出している。

 逆にアニメならではの利点というと、やはりビジュアルの豪華さだろう。エダマエがロサンゼルスのハリウッド地区にあるハリウッドサインの看板に逆さ吊るされている場面から物語はスタートするのだが、これを実写で撮ろうとしたら、どれだけ大変かと考えると、アニメだからこそできた場面だろう。

 ちなみに、冒頭でショッキングな場面を見せてからストーリーに入るという手法にも、『ブレイキング・バッド』の影響を感じる。

 一方、基調となる映像やジャズ風の音楽の使い方は、海外で人気の日本制作のSFアニメ『カウボーイビバップ』を思わせるものとなっている。

 特にCase2のエアレースにはその影響を強く感じる。同時に印象深いのは、グラフィックデザイン色が強いイラスト調の背景で、まるでわたせせいぞうのカラー漫画や、大瀧詠一の『A LONG VACATION』のアルバム・ジャケットで知られる永井博のイラストのようだ。貞本義行のキャラクターデザインも含め、全体的にスタイリッシュな仕上がりとなっており、表面こそ華麗だが嘘にまみれた詐欺師たちの世界をビジュアルで表現していると言えるだろう。だが一方で、エダマメやアビゲイルといった登場人物の過去は丁寧に描かれており、そこはとてもシリアス。この辺りはバックボーンのわからない『コンフィデンスマンJP』のダー子たちの物語とは真逆だと言えよう。

 物語も『グレプリ』の方がリアルに構築されており、同じ脚本家だからこそ、絵で描かれたアニメと、生身の役者が演じるテレビドラマの特性がとてもよくわかる。おそらく、『コンフィデンスマンJP』を観た人なら、より楽しめるはずだ。逆に『グレプリ』を観た後で『コンフィデンスマンJP』を観ても面白いだろう。是非、いっしょに観てほしい。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送・配信情報
『GREAT PRETENDER』
Netflixにて順次独占先行配信
フジテレビにて7月8日(水)より毎週水曜日24時55分〜放送 
監督:鏑木ひろ
脚本・シリーズ構成:古沢良太
キャラクターデザイン:貞本義行
サブキャラクターデザイン・総作画監督:加藤寛崇
総作画監督:浅野恭司
デザインワークス:奥田明世、清水慶太、石橋翔祐
コンセプトデザイン:丹地陽子
副監督:益山亮司
美術監督:竹田悠介
美術設定:藤井一志
色彩設計:小針裕子
撮影監督:出水田和人
編集:今井大介
音楽:やまだ豊
音響監督:はたしょう二
ミュージックエディター:千田耕平
アニメーション制作:WIT STUDIO
声の出演:小林千晃、諏訪部順一、藤原夏海、園崎未恵
(c)WIT STUDIO/Great Pretenders
公式サイト:http://www.greatpretender.jp/
公式Twitter:@GrePre_anime

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