スマホを持ったヒロインの恋愛はどう変わった? 『愛していると言ってくれ』の反響から紐解く

“スマホ”がもたらした恋愛ドラマの変化

スマホを持った令和版のキャラクター像

『東京ラブストーリー』(c)柴門ふみ/小学館 フジテレビジョン

 平成版に比べ、スマホを持った令和版の登場人物たちは、感情表現や詮索の仕方、相手との関わり方が複雑に、あるいは繊細に、ときには狡猾になっているように見えた。

 特にキャラクターが大きく変わったように見えるのはリカで、鈴木保奈美が演じた華やかでテンションが高くて「恋愛脳」で直感的で痛々しさがあったリカに比べ、石橋静河のリカはナチュラルで軽やかで自由だ。

 なかなか会えない距離・時間が、思いを募らせ、突っ走らせるエネルギーとなる面が大きいだけに、スマホを持って、いつでもすぐに直接つながれるようになった時代では、猪突猛進型ヒロインや直情径行の登場人物はどうしても生まれにくい。

 すぐに伝わってしまうからこそ、言葉を選び、相手の気持ちや状況・空気を読み、慎重になったり、距離が遠くなったりする部分はあるだろう。

 スマホがあっても恋愛ドラマの「すれ違い」は成立する。ただし、スマホを手に入れたことで、相手との距離感や付き合い方、なんなら性格も変わってしまう気がする。それが良いか悪いかはさておき、スマホを持った時代の恋愛ドラマの登場人物も、視聴者である私たちも、スマホのない時代と全く同じテイストのドラマを同じ気持ちで観ることはもうできない。

 パワフルでドラマチックな90年代の恋愛ドラマを懐かしむ一方で、林檎を食べる前の時代には戻れないことを改めて再確認してしまった。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
『愛していると言ってくれ 2020年特別版』
TBS系にて放送 ※一部地域を除く
出演:豊川悦司、常盤貴子、岡田浩暉、余貴美子、鈴木蘭々、矢田亜希子、吉行和子、橋爪功ほか
脚本:北川悦吏子
プロデューサー:貴島誠一郎
演出:生野慈朗、土井裕泰、福澤克雄
音楽:中村正人(DREAMS COME TRUE)
主題歌:DREAMS COME TRUE「LOVE LOVE LOVE」
製作著作:TBS
(c)TBS

■配信情報
FODオリジナルドラマ『東京ラブストーリー』
FOD、Amazon Prime Videoにて、配信中
出演者:伊藤健太郎、石橋静河、清原翔、石井杏奈、眞島秀和、高田里穂、手島実優、飯田隆裕、松尾英太郎、ぎぃ子、永岡卓也、フィガロ・ツェン、筒井真理子
原作:柴門ふみ『東京ラブストーリー』(小学館ビッグスピリッツコミックス刊)
脚本:北川亜矢子
音楽:戸田信子
企画・プロデュース:清水一幸
プロデューサー:森谷雄、森本友里恵
演出:三木康一郎、永田琴、山本透
制作協力:アットムービー
制作著作:フジテレビジョン
(c)柴門ふみ/小学館 フジテレビジョン
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/tokyolovestory/
FOD配信ページ:https://fod.fujitv.co.jp/s/genre/drama/ser4h06/

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