本木雅弘、“愛嬌を持った悪役”として放つ新たな輝き 『麒麟がくる』道三として物語を動かす役割に

本木雅弘、“愛嬌を持った悪役”として放つ新たな輝き 『麒麟がくる』道三として物語を動かす役割に

 早いもので、放送開始からすでに3カ月が過ぎようとしているNHK大河ドラマ『麒麟がくる』。戦国武将・明智光秀(長谷川博己)の生涯を描くこのドラマの序盤におけるキーマンは、やはり斎藤利政(道三)になるのだろう。

 光秀が最初に仕えた主君であることはもちろん、いわゆる“下克上”を成し遂げた人物として、あるいは“美濃のマムシ”の異名を持つ悪辣な武将として後世に広く知られている道三。これまで西田敏行、里見浩太朗、伊武雅刀、北大路欣也など錚々たる俳優たちが貫録豊かに演じてきたこの人物を、今回演じているのは本木雅弘だ。本木にとっては1998年に主演した『徳川慶喜』以来、実に22年ぶりの大河ドラマ出演となる今回の役どころ。このある種意外とも思えるキャスティングが、序盤の展開においては、思いのほか効いている印象がある。

 八の字型の特徴的なあごひげをたくわえながらも、その端正な面持ちとしなやかな所作はそのままに、けれども腹から出しているような太くて低い威厳のあるその声に、まずは何よりも驚かされた本木道三。それは、これまで多くの俳優が演じてきた道三のイメージとも、これまで本木が演じてきたどの役とも異なる、実に新鮮な印象を視聴者にもたらせた。とはいえ、その決断力と行動力は、まさしく道三そのものだ。主君への裏切りから娘婿の毒殺、嫡男である高政(伊藤英明)との確執、果ては敵を欺くためには味方も騙す狡猾さなど、のっけから“ダークヒーロー”然とした活躍で、本木演じる道三は、周囲の人々を振り回し続けているのだ。

 ちなみにみに本木自身、今回の役どころには、いつにも増した強い思い入れがあるようだ。彼は『麒麟がくる』の公式サイトに、こんなメッセージを寄せている。

「得体の知れない怖さや凄みだけなく、人物に対する独自の愛情を持っていた、そんな多面性の匂う道三を演じていけたらと思っています」

 実際、本木が演じる道三は、決して一筋縄では理解できない多面性を持った……別の言い方をするならば、ある種の“捉えどころのなさ”を持った人物として、本作の中で描き出されているのだった。それにしてもなぜ本木は、意外とも思える今回の役どころに挑戦するに至ったのだろうか。そのヒントは、3月28日に放送されたNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』の中にあった。

 「自意識過剰」「乙女おじさん」「気持ちより、見た目」「(プロフェッショナルとは)プロであることを疑い続けること」など、本人の口から数々の名言(迷言?)が飛び出すなど、放送直後から大きな話題を呼んだ同番組。そこで本木は、斎藤道三という“ダークヒーロー”を演じることを決めた理由について、自身のキャリアを踏まえながら次のように語っていた。

「(演じる役の)幅を広げるときに、悪役っていうのも必要になるじゃないですか。正義は意外と何かあるセオリーや筋書きに則っていけば体現できちゃうものだったりするけど、悪役ってもうひとうねり、ひとひねりないと認めにくい人間だから、その難しさと面白さがある」

 そう、気が付けば50代となった本木は今、自身の役者としての幅を広げるため、これまであまりやってこなかった“悪役”も、積極的に演じるようになったのだ。たとえば昨年、本木が出演したBBCが製作協力した英日合作のドラマシリーズ『Giri / Haji』(平岳大、窪塚洋介らがメインキャストとして出演。Netflixで現在世界配信中)。そこで彼が演じていたのは、窪塚扮する“勇人”が所属していた暴力団の強権的な組長“福原”だった。

 ダブルのスーツを着込みながら、言葉少なに相手を威圧する“福原”。そこで本木は、イギリス人が求める“クールで現代的だが、実に暴力的な日本のヤクザ”像を、見事に体現してみせた。時系列的にも、この“福原”役がひとつのステップになったのだろう。けれども、同じく部下を従えた首長であり“悪役”でありながら、“福原”と“道三”では、そのキャラクターは少々異なっている。『麒麟がくる』で本木が演じる道三は、“福原”と同じように、恐怖で相手をひれ伏させる静かな迫力を持った人物だ。しかし、本木が演じる道三には、恐怖だけではない奇妙な“愛嬌”がどこか存在するように思うのだ。

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