『絶対零度』最終回を前に残された謎をおさらい ミハンメンバーは香坂の思いにどう応える?
防犯カメラの映像や通信記録など、国内のありとあらゆる情報を集めて、犯罪を未然に防ぐ。そんな目的をかなえるべく開発された、“ミハンシステム”。『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(フジテレビ系)に登場するこのシステムが、主人公の警察官・井沢(沢村一樹)らの捜査に役立てられる場面がある一方、そのシステムをめぐって、むしろ彼らが翻弄されていくさまもしばしば描かれてきた。
シーズン4となる『絶対零度』は、いよいよ佳境に入ったが、依然、作中にはさまざまな謎が残されている。中でも、今シーズンのキーパーソンの一人である法務省の官僚・香坂朱里(水野美紀)の存在は本作の謎に大きく関わる。
本作では、結末の一部とみられるシーンが序盤ですでに明らかにされていた。ミハンを統括することになった香坂が倒れ、しかもその傍らで拳銃を握って立つ井沢の姿はその一つである。どうしてそんなことになるのか? 視聴者は大きな疑問を抱えながら、それ以降の放送を観ていくことになった。
香坂の実の父親は、かつて映画館で何人もの死傷者を出した事件の犯人であった。しかし、母親の再婚相手で、法務省に勤める義理の父親が香坂の戸籍を操作したことによって、彼女は“加害者の娘”としてのバッシングから逃れられたのだった。ただ、彼女の弟はまた別の運命をたどることに。弟は香坂と違い、世間に犯人の子であることが知れ、バッシングに絶望して自殺することになったという(実は、その弟は生存しているという可能性が作中で示され、詳細については今後に期待)。そのため、香坂は法務省の官僚になってからは、加害者遺族の救済に尽力してきたのだった。
一方、井沢範人は妻と子を惨殺された被害者遺族。一時は、宇佐美(奥野瑛太)という男が井沢の妻子殺害の犯人であるかのように思われた。しかし、事件に使われたとされる凶器が、ある日、井沢のもとへと送られ、真犯人は別にいる可能性が浮上。井沢の抱える闇は今もなお深まるばかり。自宅に戻ると今でも妻子の凄惨な様子を思い起こしてしまい、ひどくショックで苦しめられることもある井沢であった。
全く異なる暗い過去を抱える2人。しかし、そんな香坂と井沢には共通の信念がある。「あなたの、犯罪を未然に防ぎたいという思いは、僕の思いと同じだ。それが分かって良かった」とは、第4話での井沢の言葉。この「犯罪を未然に防ぎたいという思い」を共有しているからこそ2人の間に、信頼関係が生まれることになったように思える。「あなたを信じています」「あなたが必要なんです」と香坂は言っていた。そして、前回の第9話の終盤で井沢も、「僕にとってもあなたにはいてもらわないと困るんだ」と口にしていたように、2人は時間をかけて確かにお互いの立場を理解し、尊重し合っていたはずだ。それだけに、その後の展開が余計に切なく思えてくる。東京サミットでのテロを単独で止めにかかろうとした香坂は何者かの手によって銃で撃たれてしまう。