窪田正孝の主役っぷりを堪能 『初恋』で見せた“0”から“100”への起爆力

窪田正孝の主役っぷりを堪能 『初恋』で見せた“0”から“100”への起爆力

 現代におけるバイオレンス映画界の旗振り役ともいえる三池崇史監督による“初のラブストーリー”とあって、大きな注目を集める『初恋』に主演の窪田正孝。本作は彼の新たな代表作と言えそうだ。

 本作はラブストーリーという触れ込みではあるものの、あくまで、あの三池監督作。単純に男女の恋愛模様が描かれているというわけではもちろんない。主な舞台となるのは夜の歌舞伎町で、猥雑な空気が漂うなか、裏社会で生きる者たちが入り乱れる。武闘派ヤクザに、悪徳刑事ーーそんな、言葉の響きだけでも十分に恐ろしい連中のなか窪田が演じるのは、余命宣告をされたボクサー。彼は失意のなかで、夜の裏社会に囚われの身となっている少女(小西桜子)と出会うのだ。

 “余命いくばくもない◯◯”といった存在は、映画だけでなく、小説やマンガ、ドラマに演劇と、これまでにも数多くの作品に登場してきた。思い浮かべるものは人それぞれだろう。タイムリミットが定められているからこそ、限られた“生”をどうにか謳歌しようという者や、ヤケクソになって大事を成し遂げようと奔走する者などがある。窪田の演じるボクサーのレオは、この後者に当てはまる。元来レオは孤独な存在で、素人目には生死をかけたものと思えるボクシングの試合でさえも、つねにしっとり平常心。そもそも彼には“生”といったものが希薄であるように思う。ところが、余命宣告されたことによって、この“生”の重みが変わってくるのである。

『初恋』(c)2020「初恋」製作委員会

 窪田本人の持つ朴訥さはこのキャラクターにマッチし、彼の体現する主人公像はニヒリズム的なものを帯びていく。そんな窪田演じるレオは人生に対して投げやりになりになっていくわけだが、定められたタイムリミットのなか同じように孤独な少女と出会うことで、淡い恋愛模様のはじまりを予感させる。だがとうぜん、一筋縄にはいかない。少女を守るためには、危険な連中を相手にするということである。

 この設定と展開は、観客のレオに対するヒロイズムとセンチメンタリズムを煽るものの、本作にはびっくり仰天な、“医者の誤診であった”という展開が待っている。まさかのだ。レオは自分がまったくの健康体であることを知り、途端に“死”が怖くなる。つまり、“死”とは、“目の前のヤバい連中”のことだ。しかしここからが、俳優・窪田正孝の本領発揮である。感情の爆発する瞬間を演じさせて、彼の右に出るものはそういないだろう。

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