『トップナイフ』ラストが伝えるメッセージ 広瀬アリスは“強く動じない”天海祐希に追いつけるか?

『トップナイフ』天海祐希が体現するテーマ

 毎話ふたりの患者の症例を通して人間の脳の複雑さを物語る『トップナイフー天才脳外科医の条件ー』(日本テレビ系)。2月15日に放送された第6話では、過去の苦々しい記憶によって幻想に悩まされてしまった患者たちの、その過去を背負いながらも懸命に未来を生きようとする姿が描かれていく。

 事故に巻き込まれ左腕を切断した原田保(笠松将)は、切断して失ったはずの腕に激痛を感じる“幻肢痛”という症状におかされた入院患者。黒岩(椎名桔平)の家にいる、前話にて99.99……%の確率で自分の息子であると判明した子どもの名前が同じく“保”であることから、黒岩が原田に対して心なしか親身に接するなか、原田の痛みの原因が高校時代の悔しい出来事に端を発していると明らかになる。それは、甲子園出場を賭けた地方予選の決勝で痛恨のミスによりフライボールを取り損ねてしまい、試合に敗北してしまったという過去。落球した際の左手の感覚、刻まれた「エラー」の記憶、叶わなかった想いは心に深く傷を残し続け、あるはずのない腕に痛みをもたらしていた。

 一方、以前にこの東都総合病院の脳外科に在籍していたという大澤卓司(山本浩司)は、脳腫瘍によって自分の幻である“ドッペルゲンガー”が見えてしまうという症状に悩まされていた。その彼は、かつて深山(天海祐希)にクビを切られて脳外科医を諦めることになり、そのショックで飛び降り自殺を図るまで心を病んでしまった過去を鑑み、深山への復讐を遂行しようとする。しかしエレベーターに細工を仕掛けた周到な計画の最中、大澤が心を痛めてしまった原因は深山ではなく、親身に接していた患者の「死」にあったことが明るみになる。「脳外科医には2種類しかいない。最高の脳外科医と、“なってはいけない”脳外科医。彼(大澤)は後者だった」と、そう深山は語っていた。何も大澤に才能や努力が著しく欠けていたわけではないだろう。脳外科医たるもの、患者の死にも屈することのない、ある意味冷徹とも言える「度胸」と「図太さ」が必要であると深山は訴えるのだ。誰よりも深山瑤子=天海祐希こそがその強く動じない姿を完璧に体現してみせているからこそ、この世界の厳しさが嫌という程に伝わってくる。

 彼らの心の痛みを救うのは、結局は自分自身であると伝えるラスト。辛い過去は消えてなくなるものではないけれど、それを背負いながらも懸命に未来を生きようと前を向くふたりの姿はやはり、深山や黒岩といった医師たちの苦悩にも重なる。「なくしたものを背負いながらも図太く生きる」。そんな本話のテーマが重層的に響くまたとないストーリーテリングになっていた。

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