フジテレビ、スペシャルドラマの濃厚な作りで再評価? 『教場』の成功から考察

フジテレビ、『教場』成功の理由

イベント化する、テレビドラマ


 もう一つの功績は、二夜連続という放送形式だろう。すでにテレビ朝日では、昨年の5月末に5夜連続で岡田准一主演の『白い巨塔』を放送し話題となっていたが『教場』の成功で、短期連日放送という形式は今後、確実に定着していくだろう。

 日本のテレビドラマは、一週間に一時間一話を1クール(3カ月)放送するというトレンディドラマ以来の形式を基盤となってきた。しかし、インターネットの普及を筆頭とする娯楽の多様化によって、テレビドラマを観ることは年々、敷居の高いものになりつつある。何より、毎週プライムタイム(19~23時)に家に居て、リアルタイムでテレビを観なければいけないというのが厳しい。

 時代に取り残され化石のような存在だった朝ドラが現在一人勝ちしているのは、週6日、一日15分(再放送もあり)を2クール(半年間)に渡って放送するという、敷居の低い放送形式に寄るところが大きい。

 対して、じわじわと普及しつつあるのが、Netflix等の配信ドラマにおける1クール一挙配信という形式だ。世界的な基準でみれば自分の好きな時間に配信で観るという方向にドラマが進むことは間違いないだろう。

 だが一方で、リアルタイムで観ることの意味が大きいもの、例えばサッカーのワールドカップのようなスポーツ中継ならば、今でも高い視聴率を獲得できる。これはテレビドラマにも適応可能である。つまりスポーツ中継のようなリアルタイムのイベント感を高めた結果生まれたのが、一挙連続放送するというスタイルなのだ。

 『教場』のようなドラマを、年末年始や夏休みといった見やすいタイミングで連日放送するというケースは今後も増えていくだろう。逆に言うと、ここまでイベント化して導線を作らないとテレビドラマは観てもらえない時代に突入にしたのだ。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
フジテレビ開局60周年特別企画『教場』
出演:木村拓哉、工藤阿須加、川口春奈、林遣都、葵わかな、井之脇海、西畑大吾
(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、富田望生、味方良介、村井良大、佐藤仁美、和田正人
石田 明(NON STYLE)、高橋ひとみ、筧利夫、光石研(友情出演)、大島優子、三浦翔平、小日向文世他
原作:長岡弘樹『教場』シリーズ(小学館)
脚本:君塚良一
演出:中江功
プロデュース:中江功、西坂瑞城、髙石明彦(The icon)
制作協力:The icon
制作著作:フジテレビ

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