虚淵玄は2010年代を代表する作家の1人に ロボットアニメ『OBSOLETE』の感嘆すべきロジック

虚淵玄は2010年代を代表する作家の1人に ロボットアニメ『OBSOLETE』の感嘆すべきロジック

 虚淵の非凡な作家性を一言で表せば、その類い希なるロジックの構成力であり、テーマに対するルールの過酷さの絶妙なさじ加減でもある。『まどか☆マギカ』では「願い事と引き換えに魔法少女になり、闘ってグリーフシードを浄化し続けないと魔女になる」というルールが物語を苛烈せしめた。

 そしてそのロジックの構成と表裏一体となる細部、ディティールへのこだわりである。写実的な『サイコパス』シリーズを成立させているのも、執筆活動初期から変わらぬ細部への気配りゆえだろう。物語が多元に分岐するゲーム作家を出発点に選べたのも、物語がどこへ行っても矛盾しないようにその舞台を構築する構成力が高いからである。

 さらにもう一つ、細部にリアリティを持たせながらエンターテインメントとして成立させるために、大きな嘘をつく、というのも虚淵作品の特徴である。『まどか☆マギカ』におけるキュゥべえ、『GODZILLA』における恒星間飛行を可能にする異星人種「エクシフ」のように、人知や物理的限界を越えた存在を置いてしまうことで、魔法や巨大な怪獣への根源的疑問を廃し、逆にリアリティを高めている。『OBSOLETE』が従来の虚淵玄作品と大きく異なるのは、自ら考案した「リアルロボットが活躍する物語」が発端となっているところである。

 虚淵玄が影響を受けた作品に挙げる、高橋良輔監督の『装甲騎兵ボトムズ』のスコープドック=アーマードトルーパー(AT)は、顔の意匠を廃した斬新なデザインと身長4mというリアリズムで当時のロボットアニメファンに衝撃を与えた。しかし商業的に成功とは言い難く、長くロボットアニメから、低長身を含めリアルロボットは傍流におかれた。

 その現状への忸怩たる思い、ATへの忘れがたき郷愁が『OBSOLETE』の発端である。2.5mというエグゾフレーム=リアルロボットというアニメを作品たらしめるために、「ペドラー」という大きな嘘が導入された。そうして実現した安価で世界を変革する可能性を持つテクノロジーとしてのリアリティを備えることともなった。さらにその活躍を仔細に描くことが即ち物語に「南北格差」という普遍的なテーマをも語らせることにつながっており、その作品が、巨人・Google傘下のYouTubeから発信されるというアンビバレンツも面白い。

 『まどか☆マギカ』でアニメを、コンテンツ、消費財から、作品、カウンターカルチャーとしての復権を果たさせた虚淵玄ならではのロジックという他ない。30分1クールをパッケージ化してマネタイズするアニメビジネスモデルが崩壊しつつある2019年末に配信公開された12分アニメの『OBSOLETE』。「時代遅れ」というタイトルは実に示唆的である。虚淵玄が時代遅れにするものは何なのか。シーズン2も引き続き刮目すべきタイトルであろう。

■こもとめいこ♂
1969年会津若松生まれ。リングサイドで撮影中にカメラを壊され、椅子を背中に落とされた経験を持つコンバットフォトグラファーでライター。得意ジャンルはアニメ・声優・漫画・プロレス・格闘技・サバゲー等おたく趣味全般。web媒体では週刊ファイト・歌ネットアニメ他で活動中。Instagram

■配信情報
『OBSOLETE(オブソリート)』
YouTubeにて配信中
※全エピソードは、YouTube Premiumメンバー対象
※エピソード2以降は、毎週火曜日に1話ずつ無料公開予定
(c)PROJECT OBSOLETE
公式サイト:project-obsolete.com
公式Twitter @obsolete_anime
配信チャンネル:https://www.youtube.com/playlist?list=PLKPsuBIKuejNJW_M6ArHpD6DBeMIw405L

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アニメシーン分析」の最新記事

もっとみる