フランス映画を楽しむ秘訣は“おしゃべり”にあり!? 『冬時間のパリ』が描く大人の恋愛観

 ある種のフランス映画においては、恋は恋で終わるのでなく、人生そのものであるといえる。だからこのような作品では、恋愛描写において、ことさら恋愛を恋愛としてショーアップすることはない。人生を映し出せば、それが自動的に恋を描くことになるのである。そして、本作で大きな事件となる、出版社をめがけた買収劇ですら、恋愛を象徴するもののよう感じられるのだ。

 この“さりげなさ”は、ロケーションにも表れている。本作は、パリの中心部から東にかけての場所が多く登場するが、パリを絵はがきのように、観光的なものとしてとらえてはいない。屋根の見えるアパルトマンや、バー、カフェ、アイリッシュパブなど、登場人物たちの生活に根ざした光景が、あくまで自然に映し出される。ここではパリ旅行ではなく、パリの生活者の視点が味わえることになる。このような気取らない態度が、恋と人生の深い味が染み込んだ本作を、さらに大人の味わいにしている。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『冬時間のパリ』
Bunkamuraル・シネマほか全国公開中
監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス
撮影監督:ヨリック・ル・ソー
製作:シルビー・バルト、シャルル・ジリベール
出演:ジュリエット・ビノシュ、ギョーム・カネ、ヴァンサン・マケーニュ、クリスタ・テレ、パスカル・グレゴリー
配給:トランスフォーマー
協力:東京国際映画祭
後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本
2018年/フランス/フランス語/107分/原題:Doubles Vies/英題:Non-Fiction/日本語字幕:岩辺いずみ
(c)CG CINEMA/ARTE FRANCE CINEMA/VORTEX SUTRA/PLAYTIME
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/Fuyujikan_Paris/

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