【ネタバレあり】前作から驚くべき進歩を果たした『アナと雪の女王2』、そのすごさを徹底解説

『アナと雪の女王2』のすごさを徹底解説

 世界はもちろん、日本でも大ブームを巻き起こし社会現象までになった、ディズニーの大ヒット作品『アナと雪の女王』。その続編、『アナと雪の女王2』が、ついに公開された。大きな期待を受けての本作。その出来に世界の注目が集まった。

 結論からいうと、この続編は、前作から驚くべき進歩を果たした作品となっている。ここでは、なかなかひとことでは言い表せない本作のすごさについて、前作の成功の分析もあわせて評価していきたい。

 第1作のヒットの要因からして、すでに複雑である。そこにあるのは、劇中の楽曲の覚えやすさや、公開前から曲を繰り返し覚えさせたような広告戦略だけではない。

 ヒットの核となった要素の一つは、ターゲットとなる観客層の広さである。とはいっても、それは年齢の話ではない。本作のようなディズニー作品は、あえて大人向けに作らなくても、大人を童心に帰らせることで楽しませればいいのである。では、ここでいう“広さ”とは何なのか。

 “保守と革新”という言葉がある。端的に説明すると、前者は昔ながらのものを喜び、後者は新しいものを喜ぶという考え方だ。『アナと雪の女王』が話題になったことの一つに、“プリンセス・ストーリーの破壊”がある。ディズニーの長編第1作『白雪姫』(1937年)は、その代表的な楽曲「いつか王子様が」が象徴するように、もしくは『シンデレラ』(1950年)や『眠れる森の美女』(1959年) がそうであるように、清く正しい可憐な女子のところに、素敵な王子様が現れて、最終的には「いつまでも幸せに…(Ever After…)」といったかたちで締められる。このような女子の理想を投影させたストーリーが、「ディズニー・プリンセス」作品の定型となった。

 『アナと雪の女王』は、そんな伝統にあてつけるように、あえて颯爽と現れる王子様を悪い人物として描いた。そして、魔法の力を持つ女王エルサは、ひとりきりで氷の城に住み始める。そんな現代的で斬新な展開に、新しいものを求める観客が反応したのである。

 だが同時に、逆の価値観を持つ観客をも、本作は取り込んでいたのだ。考えてみれば、北欧の王国を舞台にした、王族の物語ということで、近年のディズニー作品にしては、本作はあまりに従来のプリンセス作品の枠にはまっているように感じられる。結局は特権階級への憧れをベースにしてしまっているのである。その意味では、例えば『ムーラン』(1998年)や『プリンセスと魔法のキス』(2009年)のような、新しい主人公像よりも後退してしまっている部分もあるのだ。

 そして、“ポップスター”のように、ポップソングを歌い踊ることで人気を得ようとする。従来のミュージカルをわずかに逸脱した、プリンセスとポップスターの合体。ここでは、ティーンの女子が憧れる典型的要素を、かなり露骨に具現化させているように感じられる。その意味で本作には、保守的な意味の魅力が用意されているのもたしかである。

 とはいえこの姿勢は、ある意味ディズニー作品を象徴しているともいえる。つまり、ピクサー作品のように、もともとディズニーのカウンターとして作られていた、エッジの立った作風などと比較すると、いつもどこかに古い面を引きずっているということ。そこが、悪く言えば鈍重、よく言えば品格の高さを示す、ディズニー本来の特徴なのである。

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