【ネタバレあり】前作から驚くべき進歩を果たした『アナと雪の女王2』、そのすごさを徹底解説
だが、本作はそのような話の、さらに上を行っているのではないかと思える。それは、物語の主人公が女性だからといって、必ず恋愛や性的指向について問題にしなくてもいいだろうということである。
ラストシーンで描かれるエルサの表情が物語るように、彼女が追い求めるものは、魔法の力を持った自分が、次に何をできるのかという、自分の力への可能性だ。エルサにとっての幸せとは、世界に対して力を存分に発揮できる場所を持つことなのである。それは、従来は男の領分だと思われてきた考え方だ。
この素晴らしいラストシーンは、とくに子どもたちに大きな影響を与えることになるかもしれない。本作は、ここでも前作からかなり革新的作品に変貌したように感じられるのである。
前作から6年ほどしか経ってないことを考えると、内容が飛躍的に進歩したことで、前作のように絶妙な時代とのマッチは期待できないのかもしれない。また、楽曲のキャッチーさについても、前作ほどのめちゃくちゃなまでの高揚は存在しないのはたしかだ。そして、一度幸せなラストを迎えたことで、物語を駆動する前半部分が弱いという弱点もあるだろう。だが本作は、前作以上に誠実な態度で、より意義あるテーマに挑戦しているのもたしかである。その誠実さや挑戦心こそ、本作の最大の魅力なのではないだろうか。
そのせいか、全体的にストイックな印象をも与えられてしまう本作だが、やはり“女子の憧れ”のような、ポップな要素を登場させることを忘れていない。
アメリカ製のおもちゃ、「マイ・リトル・ポニー」に代表されるように、アメリカの女の子たちの多くは、色とりどりの馬への憧れがあると思われている。今回、エルサが乗りこなすクリスタル色の馬のかたちをした水の精霊が登場することで、“ポップスター・プリンセス with クリスタルの馬”という、ポップなものを創造するという意味では、またしてもすごい組み合わせが誕生してしまっている。こういう描写のあるあたり、やはり『アナと雪の女王』の続編だなと、変に安心してしまう部分であった。
■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter/映画批評サイト
■公開情報
『アナと雪の女王2』
全国公開中
監督:クリス・バック、ジェニファー・リー
声の出演:クリステン・ベル、イディナ・メンゼル
日本語吹替版:松たか子(エルサ)、神田沙也加(アナ)、武内駿輔(オラフ)、原慎一郎(クリストフ)
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/anayuki2.html