『G線上のあなたと私』は傷を抱えた大人の群像劇 今後は“主婦”幸恵のナイスアシストに期待!?
そんな3人の間に確かな絆が芽生え始めるのは、やはりみながみな、何かに傷ついているからだろう。その傷を癒すため、問題と向き合うため、行き詰まった現状からどうにか突破口を見出すために足掻いているという点では3人は「同志」であり、この出会いは必然とさえ思えてしまう。3人と言わず講師の眞於も癒えぬ傷を負った傷ついた大人だ。
無気力だった也映子がバイオリンの発表会に向けて練習している時にだけ前進している感覚が得られると打ち明けたとき。自宅での練習に姑が乱入し「せっかくずっと楽しみにしていた練習だったのに、台無しにされて悔しい」と涙する幸恵を目の当たりにしたとき。眞於に告白するためにも発表会で無事演奏し切れるように猛特訓をする理人の切羽詰まるほどの一生懸命さや健気さに触れたとき。「自分のために」通い始めたはずのバイオリンが、「他のみんなのために」練習を頑張り、他の誰でもないこの3人で一緒に取り組むものに変わっていった瞬間だったのだろう。
また彼らの人間関係に深みを持たせ、3人という一般的には難しいとされる端数の人間関係を成立させているキーパーソンとして幸恵の存在が挙げられる。「主婦」であり「母親」でもある、通常一旦恋愛の土俵からは降りており、色恋沙汰とは異なるところから物申せる貴重な役回りだ。幸恵がいなければこのバイオリン教室での関係は也映子と理人、眞於の三角関係に終わってしまいかねず、物語は全く異なる様相を呈していたことだろう。
眞於に振られてしまった理人と也映子の関係性の変化や、とは言え理人の兄の存在を意識して気持ちに応えられなかったのであろう眞於の本心、「時間を無駄にします」という言葉に隠された真意も気になるところだ。
またキーパーソンである幸恵の姑の介護問題が浮上、このままバイオリンを3人で続けられるのかなど今後も眞於を含む4人の関係性の変化と、それぞれが自分の傷口をどう克服していくのか、みんなの幸せを祈るような気持ちと、一方で恋の波乱の予感に期待する気持ちの双方を抱えながら見守りたい。
■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで2018年の劇場鑑賞映画本数は96本。Twitter
■放送情報
火曜ドラマ『G線上のあなたと私』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:波瑠、中川大志、松下由樹、桜井ユキ、鈴木伸之、滝沢カレンほか
原作:いくえみ綾『G線上のあなたと私』コミックス全4巻(集英社マーガレットコミックス刊)
脚本:安達奈緒子
演出:金子文紀、竹村謙太郎、福田亮介
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:佐藤敦司
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gsenjou/