池田エライザ、ディーン・フジオカ、木村拓哉 秋ドラマに集結する天才キャラクターを考察

秋ドラマに集結する天才キャラを考察

 「オレはそのとき生まれて初めて出会ったんだ。本物の天才ってやつに」

 毎週火曜深夜(MBSでは日曜深夜)に放送される『左ききのエレン』(MBS・TBS系)では、広告代理店のデザイナー朝倉光一(神尾楓珠)が圧倒的な光を放つ天才・山岸エレン(池田エライザ)の背中を追いかける。また、『シャーロック』(フジテレビ系)でディーン・フジオカが演じるのは、天才的な犯罪捜査コンサルタントだ。『グランメゾン東京』(TBS系)でも、木村拓哉が三ツ星シェフを狙う。今期クールのドラマには、これまでになく天才キャラが集結。なぜ私たちはこれほどまでに天才に引きつけられるのだろうか?

 『左ききのエレン』原作は、かっぴーによる同名マンガ。ウェブ連載で圧倒的な支持を集め、現在『少年ジャンプ+』誌上でリメイク版が連載中。今回、待望のドラマ化に至った。「何者かになってやる」という思いを抱いて、日々、理想と現実の板挟みになる光一は言うなれば「凡才」。タイトルになっているエレンは、光一の前に突然現れ、強烈なインパクトを残してはるか先へと進んでいく。ここにあるのは典型的な「天才VS凡才」の構図だ。

 名作推理小説を原典とする『シャーロック』でも天才と凡才のコンビが活躍する。ディーン・フジオカ演じる獅子雄の助手を務める精神科医の若宮潤一(岩田剛典)は、規格外の頭脳を持つ獅子雄の前では凡才にすぎない。『グランメゾン東京』で、尾花(木村拓哉)の作る料理に感動した倫子(鈴木京香)は「自分には才能がない」と落胆するが、尾花とともに三ツ星獲得を目指す。

 天才が登場するとき、そこには必ず凡才が存在する。単なる引き立て役だけでなく、物語のガイド役を担い、光一のように主人公を務めることもある。天才は理解不能な憧れの対象であり、“こちら側の人間”として視聴者が感情移入できる相手が必要だからだ。

『シャーロック』(c)フジテレビ

 さらに天才にある種の不完全さを求める傾向も見られる。自身の内に犯罪衝動を抱える獅子雄や過去のトラウマに苦しむエレンなど、破綻や欠落を抱えた姿は、才能の代償あるいは天才であるが故の苦悩と理解される。彼らは、不完全であることでさらに完全無欠な存在になるという呪いをかけられているようにも見える。

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