綾野剛×杉咲花が『楽園』撮影で体感した“場所が持つ力” 「情念みたいなものはどこにでも存在する」
ベストセラー作家・吉田修一の短編集『犯罪小説集』を、瀬々敬久監督が映画化したヒューマンサスペンス『楽園』が現在公開中だ。12年前にあるY字路で起きた少女失踪事件をきっかけに、被害者の親友だった少女・紡、容疑者の青年・豪士、限界集落で暮らす男・善次郎、それぞれの人生が交錯していく模様を描かれる。
リアルサウンド映画部では、主人公・豪士を演じた綾野剛と紡を演じた杉咲花にインタビューを行った。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
杉咲「すごく不思議な場所だった」
ーーY字路で繰り広げられるシーンが印象に残りました。お二人はこの場所での撮影にどんな気持ちで臨まれていましたか?
綾野剛(以下、綾野):土地に覚悟をさせられた感覚がありました。俳優なりに何かしら考えて現場には行くのですが、この場所に行くと考えていることが意味をなさなくなる。土地の歪みに侵食されて、豪士のような人が生まれやすい環境があるんだろうなと思います。だからもう引き返せないなという覚悟がありましたね。
杉咲花(以下、杉咲):私は、写真で初めて見させていただいた時に、はっとして、すごく怖いというか、胸がジーンとなりました。紡にとってもトラウマの場所で、“どこにも行けない”と“ここだけじゃない”という思いになり、すごく不思議な場所だったと思います。
綾野:僕たちが何かを作らなくても土地が持っているロケーションが最終共演者になるので、その意味では、このY字路はなかなか強度のある場所で、最強の共演者でした。僕も杉咲さんも、土地から吸い上げて感じるものをそのまま芝居に投下していって、いい意味で台本上で読んでいる感覚とは根本的に変わるので、普段着目しないところにも気づきがありました。
ーー具体的に思い出せるシーンはありますか?
綾野:例えば、紡が豪士の車から降りた場所の掲示板に車のヘッドライトが当たって、紡の影が写ってるんです。その影で後ろから近寄ってくる豪士に気づくというシーンがあって、本来だったら音とか気配で示したりもするけれど、僕の影と杉咲さんの影が重なるんですよ。それで花が気づいて振り返るというシーンにでき上がったんですが、そういうことが発見できる、理屈じゃないすごさみたいなのは土地にあると思います。
杉咲:私もそう思いました。あのシーンは瀬々監督があの場で思いつきましたよね。
綾野:撮影中に監督が近づいて来て、影重ねるのはどう? と言われて、ですねと。僕が気付いて後ろから影で覆いかぶさる、その妙なゾッとする感覚と、自分が包み込まれている感じと、2つ意味があると思いました。