「ジョーカーは“混乱”や“無秩序”を体現」 騒ぎ続くアメリカでJ・フェニックスや監督らが心中明かす

 これまでとは異なるジョーカーを演じる上で、ホアキンはどのような会話をトッド監督と事前にしていたのか。「実は脚本を読む前に、トッド監督が僕に笑いの発作を起こしている人々のビデオ映像を見せてくれた。ジョーカーと言えば、その笑いこそが象徴的で、誰もがその笑いについては想像ができていると思うんだ」と語ったホアキン。そのアプローチ方法は功を奏したようで、「スマートなアプローチだと思ったよ。このビデオが、後の僕の役作りに役立ったんだ。それから、共同脚本家スコット・シルヴァーと共にニューヨークを訪れたことも、役作りの上で、大きな部分を占めることになった」とも明かした。

 トッド監督が今作を手がける上で最も困難だったのは、喜劇と悲劇の境界線だったそうだ。「オープニングでは、アーサーが鏡の前で笑ったりしかめっ面をしながら登場するが、観客はアーサーを見て、彼が自身のアイデンティティを探していることに気づかされる。そしてさらに物語が進むにつれ、アーサーが父親のような存在を探していることにも気づかされる。TVの司会を務めるロバート・デ・ニーロ演じるマーレイ・フランクリンだったり、母親と関係のあったトーマス・ウェインだったり。それらの出来事が観客に伝えていくのが、喜劇と喜劇の境界線なんだ。僕は人生の大部分でコメディを手がけてきて、素晴らしいコメディアンとも働いてきたが、僕のこれまでの映画では、喜劇と悲劇の境界線ははっきりしていた。だが、今作のアーサーとジョーカーには、喜劇と悲劇が共存しているんだ」。

 ロバート・デ・ニーロのスケジュールの都合で、撮影は物語の順序通りにできなかったそうだが、逆にそれが良かったと語るホアキンは「順序バラバラで撮影していたが、ジョーカーを撮影途中で演じていたからこそ、新たな解釈でアーサーを演じられていたと思うんだ」と答えた。最後にトッド監督は、今作の暴力行為などが、世間から批判を受けていることに関して「観客に暴力のリアルを感じさせ、その重みを感じさせることの方が、僕自身は責任を持って描いていると思っている」と強い眼差しで語った。

(取材・文=細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

■公開情報
『ジョーカー』
全国公開中
監督・製作・共同脚本:トッド・フィリップス
共同脚本:スコット・シルバー
出演:ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved” “TM & (c)DC Comics”
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/jokermovie/

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