『なつぞら』脚本家・大森寿美男が明かす、広瀬すずとなつの共通点 「僕の中では分け難いもの」

「山田さんの芝居が上手すぎたのはちょっと誤算でした(笑)」

ーーなつ以外のキャラクターに焦点を当てた週で一番ハマったと思う展開はありますか。

大森:夕見子(福地桃子)の展開もハマったと思ってるし、もちろん雪次郎もプラン通りですが、雪次郎に関しては、彼が雪月に帰った理由は、僕の周りに聞いても反応はまちまちでした(笑)。雪次郎は、新しい劇団という新しい波が来たときに乗れなかった。その理由を、「乗らなかった」とするために告白したんです。それを蘭子さん(鈴木杏樹)に見抜かれたことによって、自分の気持ちに気づいてしまった。なので、もう演劇では立て直せなかったんです。新しい時代に向かいたい雪次郎のジレンマをもうちょっと明確に描くべきだったかな。山田さんがまた芝居が上手いからね。もうちょっと下手だったら伝わりやすかったんだけど、彼の芝居が上手すぎたのはちょっと誤算でした(笑)。

ーー東洋動画のアニメーターには、それぞれモデルになった人たちがいると話題になっていますが、実在の人物をどのくらい参考にしたのでしょう。

大森:参考にした方はいます。でも、一回自分の中のフィルターを通して違う要素も加えながら、それに近い人を構築しようと考えました。なつもモデルがいると言われてますけども、色んな方の集合体でもあるんですよ。今回監修に小田部羊一さんがついてくださっていて、なつの造型に小田部さんのお話を参考にしています。小田部さんの奥様は女性アニメーターとして草分けになった奥山玲子さんですが、小田部さんから伺った奥山さんみたいな方のイメージも取り入れて作ってもいます。

ーーなつの自立的な女性像を描くにあたって、意識したことはありますか?

大森:昭和の時代で、社会に出ようとする女性を描くときには、同時にそれを良しとしない人を描くことが、その人たちが一歩先に進めるような展開には不可欠だと思うんです。朝ドラの歴史は、そういうものを描いてきたと思うので。特にアニメーターは、能力では男性に引けを取らないのに、男性と同等には扱われないという、明確にわかりやすい世界でもあると思いました。その辺りを今の時代とどう違うのか、自分に置き換えて観てもらえるといいなと。女性の社会進出に関しては、色んな人の意見を聞きつつ、取材をして一生懸命考えて書いているつもりですが、僕が踏み込むのはやはり不安です。でも朝ドラを書く上では逃げてはいけない大事な要素だと思っています。

(取材・文=安田周平)

■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)~全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人/岡田将生、吉沢亮、清原翔/安田顕、音尾琢真/小林綾子、高畑淳子、草刈正雄ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也、田中健二ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/

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