武田真治演じるママの愛情たっぷりの指摘 『凪のお暇』それぞれが自分の課題に気づきはじめる

『凪のお暇』凪が興味を持つことに消極的なワケ

 慎二(高橋一生)が、「こういう店はもてなす側のやさしさで回ってる」と言ったのも、きっとママの愛情ある接客に救われた1人だからだ。凪のことが好きなのにうまく気持ちを伝えられず、どんどん離れていく歯がゆさに泣き崩れていた日々も、思い返せばいつだってママは慎二の本音を引き出すことに徹していた。

 相手の愚痴を聞くことも、涙を流した相手に肩を貸すことも、小さな愛情のキャッチボール。人間とは、そんなふうに持ちつ持たれつで生きている。自分が苦しいというときに「苦しい」と言える相手がいるかどうかは、もしかしたらそれまで興味を持ってきた人がいるかどうかなのかもしれない。

 凪は、ハローワークで知り合い、ちょっと空気の読めない龍子(市川実日子)がブラック企業に転職したことを知ると「ほっておけない」と走り出す。詐欺まがいなことをしているという実態を知りながらも、誰にも相談できず、頑なに前を向くしかないと思っていた龍子。その手を取り、一緒に逃げ出す。そこに慎二が駆けつけたのも、慎二にとって龍子は、大事な凪の大事な人だとわかったからだろう。

 では、なぜ凪がこんなふうに“興味を持つ“ことに、消極的になってしまっていたのだろうか。それは、母・夕(片平なぎさ)との関係に原因があるように見える。母の「ちゃんとしてるの?」という強いしつけの結果。興味を持つことと、干渉することの差がわからなくなったからかもしれない。会話のキャッチボールで「自分から投げるのはハードルが高い」と感じるのは、凪自身がきっと求めていないボールを受け続けたせいではないか。

 現実でも、その干渉こそが愛情だと思いこんでいる人は少なくない。「興味(愛情)」と「干渉」は、“相手を知りたい“という衝動が非常に近いものに感じる。だが大きく異なるのは、そのボールの先に、相手を理解しよう、尊重しようという想いがあるかどうか。そして、抑えきれないほどの“うふふ“な笑顔と、一緒に「わかる」と言い合えるかどうか。

 似ているようで違うことを改めて見つめ直し、丁寧に1つずつクリアにしていく『凪のお暇』。ゴンは「好き」と「恋」の違いに驚き、慎二は「サラサラヘアだったころの凪」と「オフィスラブの彼女」の間でもがいている。果たして、それぞれがどのような展開を迎えるのだろうか。そして、登場人物1人ひとりの抱く本音を知りたい、理解したいと願う視聴者とこのドラマこそ、すでに愛が芽生えているのだ。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
金曜ドラマ『凪のお暇』
TBS系にて、7月19日(金)スタート 毎週金曜22:00~22:54放送
出演:黒木華、高橋一生、中村倫也、市川実日子、吉田羊、片平なぎさ、三田佳子、瀧内公美、大塚千弘、藤本泉、水谷果穂、唐田えりか、白鳥玉季、中田クルミ、谷恭輔、田本清嵐、ファーストサマーウイカ
原作:コナリミサト『凪のお暇』(秋田書店『Eleganceイブ』連載)
脚本:大島里美
演出:坪井敏雄、山本剛義、土井裕泰
プロデューサー:中井芳彦
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/NAGI_NO_OITOMA/

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