黒木華×高橋一生×中村倫也、“カメレオン俳優”三つ巴! 『凪のお暇』の不思議なバランス感

『凪のお暇』が醸し出す不思議なバランス感

 「おもしろいドラマの条件」と言われて思い浮かぶものはなんだろう。脚本、ストーリー、キャラクター、役者の演技力……。これらは何かひとつでも欠けてしまったら噛み合わなくなる。バランスが大切なドラマの世界で、固定したイメージを持たせない、幅の広い演技をする役者“カメレオン俳優”たちの特性はどのように活きているのだろうか。

 連続ドラマ『凪のお暇』(TBS系)が話題を呼んでいる。常に空気を読み、周りに合わせ、謙虚な優しい人として過ごしてきた主人公・凪(黒木華)が、会社も家も彼氏もリセットし新しい生活を始める物語だ。

 息苦しさを感じながらも波風を立てないように振る舞う凪に、思わず共感してしまったという声も多い。同僚に誘われればお弁当を持ってきていてもランチに行くし、いらないものでも勧められたら断れずに買ってしまう。毎朝時間をかけてくるくるのくせ毛をまっすぐ整え、求められている自分を作り上げて。葛藤の中、変わりたいと奮闘する凪の姿は見ていて応援したくなる。

 そんな凪を演じるのは、演技派として知られる黒木華。ドラマ初主演となった『重版出来』(2016・TBS系)では元気いっぱいの新人漫画編集を、『獣になれない私たち』(2018・日本テレビ系)では元カレの家に住みつく働けない女を演じ、着実に印象を残してきた。今回は、凪のくせっ毛を出すため実際にパーマをかけ撮影に臨んだという。役作りのためにするりと自分を変え、本作の世界を作り上げている。

 凪の元カレ・慎二を演じるのは高橋一生。会社ではさわやかでやり手の営業マンだが、凪に対してはあまのじゃくな態度を取ってしまう。凪と突然連絡が取れなくなったことに焦り、引っ越し先まで出向くものの素直になれない慎二。本当は凪を大切に思っているのに、それを表面に出すことができない慎二のもどかしさが細かな表情、仕草から伝わってくる。第1話、背中だけで号泣したシーンは何度観ても切なくなってしまう。

 子役から芸能界で活躍する高橋一生がテレビドラマで頭角を出し始めたのは、『民王』(2015・テレビ朝日系)あたりか。クールな毒舌キャラが注目を集め、その後『カルテット』(2017・TBS系)ではクセとこだわりの強いヴィオラ奏者を演じた。『僕らは奇跡でできている』(2018・フジテレビ系)『東京独身男子』(2019・テレビ朝日系)で主演をつとめ、幅広い役柄を演じ分けている。

 今回『凪のお暇』ドラマ化にあたり、同名のコミックス原作を知る読者からはキャスト発表当時こそ「慎二を演じるには年齢がやや上なのでは」と心配する声もあった。しかしいざドラマが放映されると、その心配はおろかあまりのハマり役に絶賛の嵐。かくいう筆者もそのうちのひとりである。

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