『ノーサイド・ゲーム』停滞した状況を打破する大泉洋の視点 キーワードは「誇り」

『ノーサイド・ゲーム』停滞を打破する大泉洋の視点

 自ら招いたピンチなら自分たちで摘み取るしかない。そうわかっていても、追い込まれた状況では、往々にして人脈や手法などの外部的要因に解決策を求めがちである。内も外も敵ばかりで、チームの強化費もままならない君嶋が選んだのは、足元を見つめるという発想の転換だった。君嶋の「会社や組織のせいにすることは簡単だが、大事なことはいま自分たちに何ができるかだ」という言葉を、いっぱしの美辞麗句で終わらせないために、きめ細かくエピソードを積み上げる演出が強く印象に残った。

 ひとつずつ試練を乗り越えることで、本当の意味でチームになっていくアストロズ。スポーツと企業経営の共通点は多いが、何よりもそれが組織であることが重要ではないだろうか。第4話は、華やかなリーグ戦の裏側にある一人ひとりの葛藤と成長にドラマが宿ることを示していた。その結果、浮上してきたのが「誇り」というキーワード。基本を見直すこと、自分の役割に誇りを持つこと。企業スポーツの根幹にあるスピリットを『ノーサイド・ゲーム』は鮮やかに摘出してみせる。

 第4話でも君嶋は最高のモチベーターだった。その言葉は、1人に向かうときもチーム全員に向けるときもまったく変わらない。夫を突き放し、とことん落ち込ませて、さりげなくヒントを与える真希のファインプレーも光っていた。最後に君嶋から佐々への言葉を引用する。

 「ひとつひとつなんだよ。チケット1枚1枚、ワンプレーワンプレー。それをひたむきに積み重ねることできっと逆転の目はあるはずだ」

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログtwitter

■放送情報
日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』
TBS系にて、7月7日(日)スタート 毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:大泉洋、松たか子、高橋光臣、笹本玲奈、天野義久、廣瀬俊朗、齊藤祐也、林家たま平、コージ(ブリリアン)、佳久創、村田琳、笠原ゴーフォワード、大谷亮平、中村芝翫、上川隆也
原作:池井戸潤『ノーサイド』
脚本:丑尾健太郎ほか
演出:福澤克雄ほか
プロデューサー:伊與田英徳ほか
製作著作:TBS
(c)TBS

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる