劇団EXILE 秋山真太郎が語る、俳優として小説を書く意味 「海外では俳優もクリエイティブ」

劇団EXILE 秋山真太郎が小説を書いた理由

「短編に特化して、映像作品をたくさん作りたい」

――LDHには、国際短編映画祭の「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」において、音楽と短編映画がコラボレーションする『CINEMA FIGHTERS』という企画もあります。秋山さんの小説は、こうした場での映像化も期待できますね。

秋山:小説を書くときは、全編に関して、映像を思い浮かべながら書いていました。脚本は全体の設計図を思い浮かべながら書いていくけれど、小説には描写が必要で、そこが大きな違いだとも考えています。セリフに関しては、自分や誰かが実際に口にしたらどうなるんだろうと、脚本を書くときと同じような想像の仕方で書きました。もともと、『CINEMA FIGHTERS』も、僕と別所哲也さんが共演した縁がきっかけで生まれた企画でもあるので、いずれはぜひ映像化していきたいです。

――ご自身で演じてみたい作品はありますか? 個人的には「Sleep no more」という作品を秋山さんが演じたら、面白いのではないかと思い浮かべたのですが。

秋山:「Sleep no more」の主人公は、年齢的には自分に合う役柄だと思います。ただ、僕が見た目がシュっとしてるので(笑)、書く時は違う人を想像していました。

――確かに「Sleep no more」の主人公は、もっとうだつのあがらないくたびれた感じかもしれません(笑)。松重豊さんみたいに、スラっとしてるけれどちょっと悲哀のある感じは、秋山さんの新境地にもなるのではないかと思いますが。ちなみにこの作品は何からインスピレーションを得たのでしょうか?

秋山:「Sleep no more」は、NYで鑑賞したエンタテインメントの体験をもとに書きました。マクベスのストーリーをもとにした演劇なのですが、廃墟のホテルの部屋を舞台に繰り広げられるのが大きな特徴で、観客は役者たちを追いかけながら鑑賞するんです。まさに「Sleep no more」というタイトルの作品で、観客は全員マスクを付けていて、芝居の最中は喋ってはいけないというルールがあります。でも、僕は途中でトイレに行きたくなってしまって、喋ることができないから自力で探さなければいけないのだけれど、なかなか見つけられなくて(笑)。そのときの体験をもとに、オチをつけたところ、ああいったファンタジーに仕上がりました。

――「Sleep no more」は特に映像化しやすい作品だと思います。しかも、LDHは幅広い視野でエンタテインメントを捉えていて、音楽制作、映画配給、アパレル事業、飲食業と事業を多角化しているため、アイデアを実現できます。これも劇団EXILEでクリエイティブを行う強みだと感じました。

秋山:その辺りの強みはもちろん意識して、HIROさんと共有しながらやっています。こういうアイデアだったら、この人と一緒にこういう座組みでやれば実現できるとか、色々とアドバイスをいただいたり。新しいテクノロジーとの融合に関しても、今からアイデアを練っています。例えば、これからは5Gの時代が来ますよね。それで、IoT=Internet of Things(様々な物がインターネットに接続されること)が進むと、短い尺の動画がどんどん必要になると思うんです。そこで短編に特化して、アニメや映像などをたくさん作っていきたいというビジョンがあります。監督なのか、プロデューサーなのか、それとも脚本なのか、作品への関わり方は様々ですが、柔軟にやっていきたいです。

――テクノロジーを意識しながらも、小説というフォーマットを選んだのもユニークですね。

秋山:どんなにテクノロジーが発達しても、本のページをめくって文字から想像を立ち上げていくのは「体験」なので、好きな人にはやめられないし、ずっと残り続けるものだと考えているんです。そういう表現媒体で一つ、作品が残せたのは、これからの時代においてむしろ自分の強みになったと思います。小説は書こうと思って書けるものではないので、それが完成したことは本当に嬉しいです。

――今後、掌編はもちろんですが、長編などを書いてみようという気持ちはありますか。

秋山:アイデアが浮かべば、もちろん挑戦してみたいです。ただ今回、小説を書いてみて実感したのは、一つの作品を書き終えるたびに、「次も書くことができるのだろうか?」という疑問が湧くことなんです。書くことができるかどうかは、自分にもわからないのが小説で、そこに不可思議さと魅力があるのかなと。もし、また書くことができたとしたら、それは幸運なことなのだと思います。

(取材・文=西森路代/写真=富田一也)

■書籍情報
『一年で、一番君に遠い日。』
著者:秋山真太郎(あきやま・しんたろう)
定価:本体1,700円(税別)
発売日:2019年7月11日
判型:四六判・並製

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