ジャスミンは父権社会に抗議するフェミニスト? 『アラジン』をプリンセスの変遷とともに考察
ジャスミンだけが歌う新たな曲「スピーチレス~心の声」
アニメ版『アラジン』は映画史に残る名曲「ホール・ニュー・ワールド」を生み出した。実写版でも主演の二人が美声を高らかにこの曲を歌い上げるが、今回はジャスミンのソロ曲「スピーチレス~心の声」が披露されている。
作中、「サルタンになりたい」と父親に訴えるジャスミンに、「Women should be seen, not to be heard(女性は見られるだけでいい、意見なんて聞いていない*筆者意訳)」とジャファーが女性蔑視的発言をするシーンがあり、性差別をする男性たちへの反論としてジャスミンがこの曲を力強く歌う。
とりわけ下記の歌詞に、ジャスミンが父親に反抗する女の子としてではなく、父権社会に抗議するフェミニストとして歌っているのが読み取れる。サウンドトラックの邦訳だとニュアンスが伝わらないので筆者が意訳してみた。
「Written in stone 石に刻み込まれた
Every rule, every word あらゆる規則、あらゆる言葉
Centuries old and unbending 何世紀にもわたり破られなかった
"Stay in your place" “身の程を知れ”
"Better seen and not heard" “女は見られるだけでいい、意見なんて聞いていない”
But now that story is ending でも今、そんなストーリーは終わろうとしている」(※3)
2017年の映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインへのセクハラ告発をきっかけに、#MeTooを含むフェミニズムが広がったイメージがあるが、実はアメリカの女の子の間では、2014年頃から#BanBossyというSNSキャンペーンが行われてきた。これは、男の子が自己主張すると「Leader(リーダー)」と褒められるのに対し、女の子が同じことをすると「Bossy(威張っている)」というレッテルを貼られてしまうことに問題提起する運動で、「I’m not bossy.I’m the boss(私は威張っていないわ。私がボスなのよ)」というキャッチフレーズでビヨンセも参加している。大人を変えるのは難しいかもしれない。でも、未来の子供たちを作るのは我々大人だ。マーケティングや売り上げが目的であろうとも、ディズニーのプリンセス映画は正しい方向へ向かっている。
参考
※1…Has The Disney Princess Marketing Machine 'Frozen' Our Girls' Imaginations? – Forbes
※2…Disney defends 'browning up' white actors for roles in live-action Aladdin – The Telegraph
※3…Speechless - Disney Clips.com
■此花さくや
映画ライター。ニューヨークのファッション工科大学(FIT)を卒業後、シャネルや資生堂アメリカなどのマーケティング職を経てライターに転身。ファッションの背景にある歴史や文化から映画を読みとくのが好きで、「シネマトゥデイ」「女子SPA!」 「dmenu映画」 「THE FASHION POST」など様々な媒体にて映画コラムやインタビュー記事を執筆中。
■公開情報
『アラジン』
全国公開中
監督:ガイ・リッチー
脚本:ジョン・オーガスト、ガイ・リッチー
音楽:アラン・メンケン
出演:メナ・マスード、ナオミ・スコット、ウィル・スミス
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2018 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved
公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/aladdin.html