ジャスミンは父権社会に抗議するフェミニスト? 『アラジン』をプリンセスの変遷とともに考察

ジャスミンは父権社会に抗議するフェミニスト? 『アラジン』をプリンセスの変遷とともに考察

“ダイバーシティ&インクルージョン”をプロモートする「シスターフッド」

 新作『アラジン』のジャスミンは、旧作と同じく「自分の結婚相手は自分が決める」という強い意志のみならず、さらにパワーアップし、「プリンセスではなく王国を統治するサルタンになりたい」というキャリア志向の持ち主だ。だが「女はサルタン(国王)になれない」「王女は王子としか法律上結婚できない」と父親や側近のジャファーにその願いを一蹴されてしまう。

 そして、悔しさと怒りでくじけそうになるジャスミンの強力な助っ人である侍女、ダリアが登場する。旧作のアニメ版ではなかったダリアというキャラクターは、どんなときもジャスミンの味方で、ときには彼女に助言や自信を与えたり、さりげなくお手本になったりと、ジャスミンの自己アイデンティティや女性としての自信を強固にする役割を果たす。ジャスミンとダリア。『アナ雪』のエルサとアナのような姉妹ではなく“赤の他人”、しかも、肌の色も違う、異なる社会階層に属する二人の女性を団結させたのはなぜなのかーー。

 それは、近年注目されている“ダイバーシティ&インクルージョン”の概念(多様性を包括する)が“シスターフッド”を媒介にプロモートされているからだ。事実、ジャスミンを演じたナオミ・スコットはインド系のイギリス人、アラジン役のメナ・マスードはエジプト系カナダ人、ダリアを演じたのはイラン生まれのアメリカの女優、ナシム・ペドラドだ。言わずもがな、ジーニーを演じたウィル・スミスはアフリカ系アメリカ人である。

 また、ジャスミンにプロポーズする王子はアニメ版ではアラブ系のように見えたが、実写版では白人の王子に変更されていることから、キャスティングやシスターフッドを描く物語をとおして、“ダイバーシティ&インクルージョン”をディズニーが声高にプロモートしていると言えるだろう。

おへそを見せないジャスミンと消えた踊り子

 加えて興味深いのは、実写版ではジャスミンがおへそを見せる衣装を着ていないこともある。トレードマークのブルーカラーのパンツはアニメ版と同じだが、新しいジャスミンはおへそを決して見せない。

 同様に、ジーニーが歌う「フレンド・ライク・ミー」のシーンも、旧作に登場したへそ出しルックのセクシーな女性踊り子の代わりに、ジーニーの複製を差し換えている。セクシーでエキゾチックという“人種ステレオタイプ”をアラブ人女性に押し付け、作品上で彼女たちを性的対象物化しないために、ディズニーが修正したものだろう。無論、アニメ版も名作だが、アラブ人女性がまとった露出の多い衣装や、主要人物以外のキャラクターが喋る中東訛りの強い英語などは、現代のポリティカル・コレクトネスの基準には決して達してない。それでも今回の実写版では、白人のエキストラの肌を濃く塗ったということでディズニーには批判の矢が向けられてしまったのだ。(※2)

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「映画シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる