柳楽優弥が示す、“表現者”としての真価 『CITY』『泣くな赤鬼』『ザ・ファブル』を軸に考察
5年ぶりの主演舞台『CITY』の公演を無事に終え、『泣くな赤鬼』『ザ・ファブル』と、出演した話題作の公開が続く柳楽優弥。やはり、彼はいつも驚きを与えてくれる俳優である。
柳楽といえば、カンヌ映画祭で主演男優賞を受賞した『誰も知らない』(2004)への出演をはじめ、幼い頃より俳優としてのキャリアをスタートさせたことは、恐らく誰もが知るところだろう。2012年に故・蜷川幸雄が演出する『海辺のカフカ』で主役として初舞台を踏み、2014年の『金閣寺』でも主演。気鋭の演出家・藤田貴大ひきいる「マームとジプシー」の最新作『CITY』が、5年ぶりの主演舞台となったのだ。
映画『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)など、映像作品では年を追うごとに進化を見せてきた柳楽だが、演劇では座長として作品を牽引する力だけでなく、役者・スタッフが一堂に集う現場での集団クリエーションとあって、高い協調性が求められるだろう。とくに「マームとジプシー」の作品は目まぐるしくシーンが移り変わり、それに応じて、演者たち自身が舞台セットを変形させていく。初めて観劇した方であっても、本作には高い身体能力、そして高い集中力が必要とされることは容易に理解できるはずである。ほんの些細なミス、呼吸の乱れが、作品の破綻に繋がりかねないのだ。その緊張感を、観客は息を呑んで見つめ、共有するのである。
それでいて本作は、“ヒーロー”を主題に据えた作品だ。柳楽は主役として華麗なアクションをこなし、その声と身体とで、現代社会の“正義”の在り方を問いかける。凄まじい運動量によって肉体にただならぬ負荷をかけながら上げる彼の悲痛な叫びに、思わず涙したのは筆者だけではないはずだ。こうして私たちは舞台上で躍動する柳楽の姿を目にすることが叶ったわけだが、今年は映画での活躍も目を見張るものがある。