マーベル、DCに続く第三勢力 従来の“ヒーロー像”を逸脱する「ダークホースコミックス」の魅力

「ダークホースコミックス」の魅力とは?

 作品を生み出したクリエイターを第一に考える同社だが、これは映像作品の場合も同様である。『シェイプ・オブ・ウォーター』で第90回アカデミー賞作品賞をはじめとする4部門を受賞したギレルモ・デル・トロ監督がメガホンを取った『ヘルボーイ』(2004)、『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(2008)では、原作のマイク・ミニョーラが招聘され、映画向けのデザインなど幾つかを監修した。コミックスの原作者を映画製作に迎えることで、原作を逸脱するリスクを最小限に抑える狙いもあるのだろう。このことで“ダークホース映画”は原作の再現度がきわめて高い傾向にある。例えば、アメコミ映画全般を含めても、『シン・シティ』(2005)の原作リスペクト、また再現率は見事なものである。

今秋公開のリブート版『ヘルボーイ』

 『シン・シティ』はフランク・ミラーによるグラフィック・ノベルを実写化した作品だ。監督はロバート・ロドリゲスだが、共同監督としてフランク・ミラーの名がクレジットされている。ほとんどのアメコミが色づけされたカラーであるのに対し、原作の『シン・シティ』はほぼ全編をモノクロで描き、その一部に赤、黄色、青といった原色系のカラーを配したアーティスティックな画風が特徴だ。映画はこの特徴的な部分をすべて再現し、陳腐な言い方だが、まさに“動くグラフィック・ノベル”と形容できる前衛的なアメコミ映画を創り出した。同じくフランク・ミラー原作の『300 〈スリーハンドレッド〉』(2006)で、同氏は製作総指揮に名を連ね、原作における鮮烈なアートを徹底して反映させている。

 かように、ダークホースの映像事業では、コミックブックの原作者をプロジェクトに投入することで、原作コミックスの雰囲気をより忠実に再現するだけでなく、大手メジャー会社には真似できない個性に富んだ作家性を内包させているのだ。クリエイター・ファーストな製作方針によって、コミックスと映像作品とにおける解釈の乖離は減り、作家それぞれの持ち味を映画に持ち込むことができる。いわゆる“ヒーローもの”を描くとなれば、メインストリームの右に出る者はいないだろう。しかし、『マスク』(1994)のように独創的で、『ヴァイラス』(1999)のようにユニークな作品というのは、ふり幅の広いダークホースだからこその妙技だろう。

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