夕見子目線のもう一つの『なつぞら』 “2人目のヒロイン”に注目が集まる理由

夕見子目線のもう一つの『なつぞら』

 人間の性格・性質は、もともと持っているものだけでなく、環境や立場によって形成される部分が多分にある。「家の中では母親に威張っているのに、学校では地味キャラ」とか「陰キャラ同士でははっちゃけているのに、ウェイ系がそばにくるとおとなしくなる」とか「家の中では一人前に扱われないが、友達にはしっかりしていると言われる」などは、よくあるケースだろう。そうした「立ち位置」と「キャラクター」は、家の中においては、親の性質と、きょうだい関係によって形成されることが多い。

 そして、『なつぞら』の場合、なつがやってきた環境の変化で、立ち位置が最も脅かされるのは、当然ながら夕見子だ。

 なつとは性別が異なり、「家長」になるはずの長男・照男(清原翔)や、末っ子でしっかり者の妹・明美(平尾菜々花)のポジションは変わらないが、性別も年齢も一緒の夕見子は、「ザ・主役」のなつの登場で大きく割を食うことになる。

 なつが良い子であればあるほど、周囲には比較されてしまうし、だからと言って、なつと競い合うように唐突に良い子になるのも違う。お菓子を買ってきたこと・笑顔だったことだけで、祖父だけでなく従業員に驚かれてしまう夕見子が、家の中でキャラ変をするのは並大抵のことじゃない。

 でも、どこにいても主役として輝くなつの存在によって、自分が陰の役割にまわったとしても、そこでなつに意地悪したり、不貞腐れたりしないのが、夕見子の賢さ・強さである。

 これまで何も考えずに思ったことを言い、やりたいことをやってきた夕見子は、なつの登場により、大いに戸惑い、思考するようになった。だからこそ、誰よりもなつのことをよく見ているし、よく理解している。

 祖父のために演劇をやろうとするなつには、「あんたのそういうところ、ホントつまんない。やるんだったら、自分のためにやんなよ!」と背中を押してあげるし、なつの思いを知るからこそ、なつのノートをのぞき見する母・富士子(松嶋菜々子)を嗜めもする。

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