『俺のスカート、どこ行った?』が描く「ダイバーシティ」への返答 古田新太の新しい教師像とは
ぶっ飛んだ言動が目立つ原田だが、よく見ると一貫した行動原理があることに気づく。それが「対話」だ。ともすれば他者不在のモノローグに陥りがちな風潮の中、相手の言葉を受けて返すという基本を原田は忠実に実践する。
第3話で不登校になった光岡(阿久津仁愛)に再テストを受けさせるため、原田は光岡の自宅を訪ねる。ベランダで窓1枚をはさんで対峙する原田と光岡。窓ガラスを割りそうな原田の勢いに根負けして光岡は原田を自宅に上げる。
もし光岡が開けなかったら、原田は窓ガラスを割っただろうか? 答えは想像する以外ないが、おそらく原田は割らなかっただろう。光岡の母親が1人で家計を支えていることを知っていたし、なにより光岡を信じていたからだ。
ある意味、原田と対照的なのが名作ドラマ『GTO』(フジテレビ系)の教師・鬼塚である。家族の会話がなくなった生徒宅の壁をハンマーでぶち壊し、プライベートにも踏み込む鬼塚は、破天荒な言動で凝り固まった学歴主義に風穴を開けるアンチ・ヒーローだった。原田の場合、校門や自転車を壊すことはあっても、生徒と対峙するときはあくまでも1対1の対話がベース。基本的に相手の内心に立ち入らないが必要とあれば率直に切り込む。その見極めが絶妙だ。
北風でも太陽でもなく、相手へのリスペクトが根底にあってはじめてできることだろう。生徒が心を開いた瞬間に原田のズラが取れるシーンは、コミカルな中にも、教師やゲイなどの属性も脱ぎ捨てて1人の人間として向き合う原田の姿勢が表れている。
学校という閉じた社会に内部から一石を投じる原田。多感な10代の心情に先入観なく向き合うことができるのは、ゲイバーを経営していたという経歴や、娘の元彼の安岡(伊藤あさひ)から慕われる人間的魅力に負うところも大きいだろう。
今後、原田の過去が明かされるにつれて、生徒との関係にも変化が生じることが予想される。ダイバーシティを取り巻く問題に等身大のアンサーで返す原田の活躍に注目したい。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京の片すみで音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/twitter
■放送情報
土曜ドラマ『俺のスカート、どこ行った?』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:古田新太、松下奈緒、白石麻衣、永瀬廉(King & Prince)、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、長尾謙杜(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、阿久津仁愛、須藤蓮、堀家一希、眞島秀斗、富園力也、黒田照龍、河野紳之介、兼高主税、葵揚、次も大塚、吉田翔、中西南央、高橋ひかる、竹内愛紗、箭内夢菜、秋乃ゆに、宮野陽名、国府田聖那、染野有来、西村瑠香、前川歌音、宮部のぞみ、松村キサラ、松永有紗、菊池和澄、宇田彩花、横島ふうか、小市慢太郎、じろう(シソンヌ)、桐山漣、大西礼芳、片山友希、伊藤あさひ、田野倉雄太、中川大輔、大倉孝二、荒川良々、いとうせいこう
脚本:加藤拓也
音楽:井筒昭雄
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:大倉寛子、茂山佳則(AXON)
IPプロデューサー:植野浩之
キャラクター(原田のぶお)監修:ブルボンヌ、白川大介
演出:狩山俊輔、水野格
制作協力:AXON
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/oresuka/