『名探偵コナン ゼロの執行人』安室透はどう描かれた? キャラクターの魅力引き出す劇場版の作り方
4月12日に名探偵コナンシリーズの劇場版第23作目となる『名探偵コナン 紺青の拳』が公開された。前作の『名探偵コナン ゼロの執行人』が興行収入91億円越えというメガヒットを記録し、今年のGW10連休も考慮に入れるとシリーズ初の100億円越えも十分あり得るだろう。
しかし、劇場版『名探偵コナン』シリーズは決して初めから興行収入が突出したわけではなかった。むしろここまで跳ね上がったのはここ数年のことだ。それまで30億円前後で推移したものの、コラボレーション作品である『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』を除くと18作目の『異次元の狙撃手』にて初の40億円を突破、20作目の『純黒の悪夢』では60億円を突破し、驚異の興行収入増を記録している。日本においては『映画ドラえもん』など多くの子ども向けアニメシリーズがあるが、なぜコナンはそこまで興行収入を伸ばしたのだろうか? その理由を『ゼロの執行人』と安室透の関係から読み解いていきたい。
※以下、『名探偵コナン ゼロの執行人』に関するネタバレ含む。
『ゼロの執行人』において中心的なキャラクターとなったのは、原作では75巻と比較的最近に初登場したものの、古くからの馴染みのあるキャラクターたちと同等以上に高い人気を誇る安室透だった。毛利小五郎の弟子であり探偵事務所のある建物の1階にある喫茶店ポアロに勤めながら、その裏ではコナンの追う黒の組織の一員であるバーボンとしての顔を持つ。その本性は警察庁の中でも秘密裏に活動することの多い公安部に所属する警察官であり、3つの顔を持つことから劇場版の予告などでもトリプルフェイスの男と称されている。
コナンシリーズが興行収入を爆発的に伸ばしたのは『純黒の悪夢』からだが、この作品は劇場版20作目ということもあり黒の組織の秘密に迫る内容というだけあって大きな話題となった。安室透も同作で劇場版デビューを果たしており、ライバルである人気キャラクター赤井秀一との共演に胸を熱くしたファンも多い。
コナンシリーズは、長く続く原作の中で人気の高い準レギュラーキャラクターを中心とした物語が特徴的だ。同じ国民的アニメシリーズである『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』の劇場版にもゲストキャラクターは登場するが、それは映画オリジナルのキャラクターであり、基本的には原作やテレビシリーズには登場しないことが多い。しかし、『コナン』は長期連載作品である原作に登場する数多くの人気キャラクターの存在というアドバンテージを活かし、普段は準レギュラーで活躍が限られがちなキャラクターに注目することで、キャラクタームービーとしての魅力を発揮している。