>  > 『ザ・クエイク』災害の背後にある絆

ノルウェーで大ヒット 『THE QUAKE/ザ・クエイク』が描く、災害に直面した家族の絆と社会問題

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 映画のなかで崩落の兆候に、いちはやく反応したのが、クリストファー・ヨーネル演じる主人公の地質学者、クリスチャンだった。だが津波警戒センターは、クリスチャンの必死の訴えを耳にしながら、なかなか避難警報を出そうとしない。もしもその予測が間違いだった場合、避難にともなう観光地施設の金銭的な損害や、観光地そのもののブランド価値を下落させることにつながり、警報を出すセンターの責任が問われることになるからである。よって、本当に災害が起き始めるギリギリまで避難警報のボタンを押そうとしないのだ。

 実際のノルウェーの行政の内情までは分からないが、人々の命の危険よりも、個人の保身や、ある団体の不利益を回避することを優先させてしまうことで、被害が深刻化する可能性が生まれるという問題は、もちろんノルウェーのみにとどまるものではなく、どこにでもあり得る脅威である。『THE WAVE/ザ・ウェイブ』は、災害を表現する迫力の映像だけではなく、そんな社会問題を組み込んだことで、そのどちらも現実に起こり得るという、無視できない状況を映画のなかに表現した。だからこそ、そんな不安をなんとなく感じている人々の興味を刺激して大ヒットにつながったのだ。ローアル・ユートハウグ監督は、この映画での成功が評価され、ハリウッド映画『トゥームレイダー ファースト・ミッション』(2017年)の監督に抜擢されることになった。

 ユートハウグ監督に代わって本作『THE QUAKE/ザ・クエイク』を監督するのは、『特捜部Q Pからのメッセージ』(2016年)の撮影で、アクションとサスペンスシーンを高いクォリティーで表現したヨン・アンドレアス・アンネシェン監督。その手腕と性質もあり、本作は『THE WAVE/ザ・ウェイブ』を超えるスケールと、大幅に強化された娯楽性で、都市の大地震の脅威を描く作品となった。オスロ上空からの大地震の衝撃を映し出すシーンや、倒壊寸前の高層ビルでの命を懸けた救出劇など、スペクタクルとサスペンスが同時に描かれることで、緊張が途切れず持続。そこではハリウッド映画では敬遠されるような展開も用意されている。そしてもちろん、「警報を鳴らすか否か」という深刻な問題が、またしても重要な要素となる。

 舞台となるのは、ノルウェーの首都であり、最大の都市でもあるオスロだ。歴史的な建造物と近代的な高層ビルが立ち並び、「オスロフィヨルド」にも面している、古今の文化と自然が融合した美しい街である。

 『THE WAVE/ザ・ウェイブ』の災害から3年経ち、災害を予測したことで自分の愛する家族を含めた大勢の命を救い、メディアに英雄扱いされたクリスチャン。それでも彼は、災害によって人命が失われたことに自責の念を感じていて、それは彼の私生活にも影響を与え、様々な支障をきたしていた。ハリウッドの娯楽映画では、なかなかこのように前作の悲劇を引きずる描写は少ない。従来のステレオタイプな見方では、ノルウェー人はヨーロッパのなかでも素朴な国民性を持つといわれてきたが、そんな生真面目さを、本作の主人公クリスチャンは体現しているのかもしれない。

 そんななか、クリスチャンは他の研究者が死亡したことをきっかけに、オスロでまたしても災害の予兆に気づき始めることになる。だが、やはり当局はそんなクリスチャンの訴えを本気にはしない。大きな災害を予見して英雄となった人物の声でさえ、首都の大地震となると、その予見は社会システムを動かす人々にとって迷惑きわまりないものとなる。警報を出すことで首都機能が麻痺し、それが間違いだとなれば、やはり責任問題となるからだ。災害がより大規模であることが予想されるほど、その対応は消極的なものになってしまうという矛盾……。

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