福原遥×佐藤大樹×鈴木仁の三角関係が煌めく 『4月の君、スピカ。』は“瑞々しさ”が溢れる恋愛物語

 私たち自身、ふだんは言えないような言葉も、旅先などの非現実的な場所では何の気なしに口にできてしまうことがあるもので、本作は全編を通してそれに近い感覚がある。さらには天文学になぞらえて会話を進めることで、セリフのひとつひとつが、よりロマンチックで美しい言葉に感じられるのだ。

 あまりにのどかな自然を背景に物語が進んでいくため、のんびりと映画を見てしまいそうになるが、ストーリー自体はかなりスピーディー。とはいえ、ところどころに「どうして?」と思わせる余白を残しつつ、その答えとなる事実を“謎解き”のように端的に描いていくため、物語がわかりやすいのも魅力だろう。“好き”という気持ちを大切にする登場人物たちだからこそ、こじれてしまう互いの関係。それは星と泰陽、星と深月の恋愛に限ったことではなく、深月と泰陽の友情にも言えること。本作では、そんな男同士の友情も大きなテーマとなっているが、その部分についてもテンポよくバシッと描き切ってくれているため、後味も良い。

 佐藤は、意外にもこれまで披露してこなかった“壁ドン”などの胸キュンシーンを。鈴木は『花晴れ』で印象的だった“超女好き”キャラからはかけ離れた、無口でミステリアスな青年を。また福原は、大人になり切れない女子高生のリアルな心情を映す演技を魅せるなど、フレッシュな俳優陣たちによる、新たな挑戦が詰まっているとも言える本作。キャスト、セリフ、そしてロケーション。『4月の君、スピカ。』は、たくさんの“瑞々しさ”であふれていた。

■nakamura omame
ライター。制作会社、WEBサイト編集部、専業主婦を経てフリーライターに。5歳・7歳の息子を持つ2児の母。ママ向け&エンタメサイトを中心に執筆中。Twitter

■公開情報
『4月の君、スピカ。』
新宿ピカデリーほかにて全国公開中
原作 :杉山美和子『4月の君、スピカ』(小学館『Sho-Comi』連載)
監督:大谷健太郎
脚本:池田奈津子
出演:福原遥、佐藤大樹 (EXILE/FANTASTICS)、鈴木仁、井桁弘恵ほか
(c)2019 杉山美和子・小学館/「4月の君、スピカ。」製作委員会
公式サイト:kimispi-movie.com
公式Twitter:@kimispi_movie

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