暴れたいのに暴れられない人へ 『キャプテン・マーベル』の熱いメッセージ性と軽快なユーモア

 ちなみに、本作はこうした熱いメッセージに満ちた映画であるが、同時に90年代のアクション映画に強く影響された大変コミカルな映画でもある。ブリー・ラーソンの有無を言わさぬ鉄拳制裁、異常な行動力、ファンキーでヴァイオレンスなジョークは、80~90年代のシュワちゃんを彷彿とさせる。MCUきっての堅物であるはずのニック・フューリーは、完全に『ダイ・ハード3』(1995年)や『ロング・キス・グッドナイト』(1996年)で見た“あの頃のサミュエル”と化している(今回に限っては竹中直人ではなく大塚芳忠の吹き替えで観たいと思うほどだ)。ラシャーナ・リンチ演じる相棒パイロットのキャラクターも非常に良いし、彼女が繰り広げる言い訳できないレベルの『インデペンデンス・デイ』(1996年)な空中戦も楽しい。ネタバレになるので詳しくは書かないが、物凄く『メン・イン・ブラック』(1997年)っぽいシーンもある。

 10年続いてきたMCUにとって一つの区切りとなる『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)を目前に控えた今、熱いメッセージ性と軽快なユーモアで、ユニバースにフレッシュな追い風をもたらした本作に拍手を送りたい。ともかく今、何らかの事情で暴れたいのに暴れられない人にはオススメしたい。「〇〇だって暴れたい」の〇〇は、女の子だけではないだろう。この映画は、きっとあなたの背中を押してくれるはずだ(でも犯罪はダメですよ)。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

■公開情報
『キャプテン・マーベル』
全国公開中
監督:アンナ・ボーデン、ライアン・フレック
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:ブリー・ラーソン、ジュード・ロウ、サミュエル・L・ジャクソン、クラーク・グレッグ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2019
公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/captain-marvel.html

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