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『映画刀剣乱舞』は良質な国産ファンタジー “ネオ時代劇”的シナリオが広く支持される要因に?

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耶雲哉治×小林靖子による無駄のない仕上がり

 ふたつ目は、歴史エンターテインメントとしての面白さだ。鈴木ら刀剣男士の多くは、舞台版でも同役を演じている。こうした作品群のことを、演劇の世界では「漫画やアニメ、ゲームといった2次元の世界を3次元の人間が演じる」ことから2.5次元舞台と呼んでいる。

 ただ、それはあくまで舞台の話。予備知識として知っておく程度で、本作についてはあまり変な色眼鏡をかけずに観てほしい。なぜなら、『仮面ライダー電王』など多くの特撮作品やアニメ作品を手がける小林靖子の脚本は、2.5次元うんぬんというより、単純に時代劇として非常に趣向を凝らした内容となっているからだ。

 どちらかと言えば、「ネオ時代劇」的色彩の方が濃い。日本の史実で最も有名な事件のひとつである「本能寺の変」を題材に、「織田信長暗殺」という年表の一行の裏に秘められたドラマを再構築。もしかしたらこういう歴史があったかもしれないと想像が膨らむ、気合いの入ったシナリオだ。小林自身が時代劇のファンでもあるので、『刀剣乱舞』を知らなくても、歴史好きなら十分楽しめると思う。

 耶雲哉治がメガホンをとる映像にもファンタジーとしての華やかさだけでなく、時代劇らしい重厚感が通奏低音として横たわっており、よく磨かれた刀のように鋭く、無駄のない仕上がり。ファンタジー映画やアクション映画と言えば、どうしてもハリウッドを中心とした洋画の勢力が強いが、日本でもこんな作品が撮れるんだとアピールできる良質な国産ファンタジーとなっている。

「主」の命を守る、忠義の心

 そしてみっつ目は、『刀剣乱舞』の世界観を活かしたシナリオの妙味だ。前述した通り、彼らは刀。つまり、あくまでモノでしかない。だが、そんな刀であることが「織田信長暗殺」という日本史上最大のミステリ-の謎を解く鍵になっている構造が面白い。

 また、それだけでなく、モノであるからこそ、自らの任務にストイックなまでに忠実。そんな刀剣男士の武士道精神が映画でも克明に描写されていた。

 刀である彼らにとって、持ち主は「主」そのもの。「主」の命を守るため、時に多くの敵を斬り、そのたび血にまみれてきた。人の形を与えられた今も、その忠義の心は何も変わらない。不器用なまでに、己に与えられた使命を貫き通そうとする。そこに、現代の日本ではなかなか語られにくい美学が感じ取れるから、つい心を動かされてしまうのだ。

 特に注目は三日月宗近(鈴木拡樹)。正しい歴史を守るため、彼は裏切り者のような行動を取りはじめる。その真意が見えたときに、刀としての潔さと強さが浮き彫りになってくる。これが、普通の人間同士の話なら、まったく別の感慨になっていたと思うので、改めて「名だたる刀剣が戦士の姿となった」刀剣男士という設定の面白さを再発見したような気持ちだ。

 本作をご覧になって興味を持った方は、ぜひ舞台版やミュージカル版の『刀剣乱舞』も観てほしい。日本発、世界で愛される『刀剣乱舞』の魅力はまだまだ果てしなく広がっている。


■横川良明
ライター。1983年生まれ。映像・演劇を問わずエンターテイメントを中心に広く取材・執筆。初の男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が1/30より発売。Twitter:@fudge_2002

■公開情報
『映画刀剣乱舞』
全国公開中
出演:鈴木拡樹、荒牧慶彦、北村諒、和田雅成、岩永洋昭、定本楓馬、椎名鯛造、廣瀬智紀
原案:『刀剣乱舞-ONLINE-』より(DMM GAMES/Nitroplus)
監督:耶雲哉治
脚本:小林靖子
配給:東宝映像事業部
(c)2019「映画刀剣乱舞」製作委員会
(c)2015-2019 DMM GAMES/Nitroplus
公式サイト:touken-movie2019.jp

      

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