色彩とジブリ作品の関係性とは? 三鷹の森ジブリ美術館「映画を塗る仕事」展を小野寺系がレポート
アニメーションの画面は、全てが色で埋め尽くされている。では、スタジオジブリを代表する高畑勲監督、宮崎駿監督作品では、どのような基準でその色彩を決めていたのだろうか。
三鷹の森ジブリ美術館で、企画展示「映画を塗る仕事」展が開催中だ。スタジオジブリ作品では、大勢のスタッフによる様々な専門技術が駆使されているが、今回の展示は「色」に着目し、アニメーションの作り手がどのように色を選び、どのように画面を彩っていたのか、魔法のようなアニメーションが生み出されてきた秘密の一端が解き明かされる内容になっている。
「映画を塗る仕事」展では、スタジオジブリ作品で実際に使われたセル画や設定資料、その他様々なものが展示されている。この記事では、そのなかで宮崎駿監督の代表作といえる二つの作品『となりのトトロ』(1988年)、『もののけ姫』(1997年)をとくにピックアップして、実際の作品を振り返りながら、色彩とジブリ作品の関係について考えていきたい。
『となりのトトロ』(1988年)使用色数:308色
公開より30周年を迎えた『となりのトトロ』。地上波ではこれまでに16回も放送していることもあり、日本人のかなりの数が複数回視聴し、スタジオジブリの象徴ともなっている作品だ。
1988年は『火垂るの墓』と『となりのトトロ』、二大監督の代表作が同時上映された年だった。この本当の凄さが広く理解されるのは、その後大ヒットを記録した『魔女の宅急便』(1989年)以降、スタジオジブリ作品が国民的な存在として定着した後年のことになる。『となりのトトロ』は、時間をかけ多くの視聴者の目に触れることにより、その真価が広く浸透していったといえるだろう。
このような作品は、同様に国民的であり世界でも愛される黒澤明監督作がそうであるように、あまりに有名な存在になってしまったからこそ、新鮮な目で評価しにくい部分がある。だがあらためて『となりのトトロ』を、現在の様々なアニメーション作品と同列に置いて比較検討してみると、その凄まじいほどの完成度はもちろん、自由な感性と思慮深さに圧倒されてしまう。