SABU監督が語る、『jam』撮影裏話と劇団EXILEの個性 「全員が本気で向かってきてくれた」

「劇団EXILEは揃ったら不思議と“グループ”になる」

――劇団だからこその空気感を感じることはありましたか?

SABU:秋山(真太郎)くんと八木(将康)くんのコンビの掛け合いはそういう感じがすごくありましたね。上手でしたし、ヒロシと3人になったときの空気感もすごくおもしろかった。みんなすごく仲良しで、俺が俺がっていう感じはないんですよね。

――3人以外の印象も聞かせてください。

SABU:秋山くんはまじめ。すごく考えてきたうえでやってるなというイメージ。彼はもともと髪が短くて、最初に会ったときは黒かったかな。チンピラっぽい、変なスナックのボーイさんとかが似合いそうな印象でした。そこからヤクザ役に持ってきて、髪の色も変えてもらいました。八木くんとは現場で初めて会って、顔が四角いという話は聞いていたので、覆面をかぶってもその四角さが分かったらおもしろいなと(笑)。秋山くんの細い感じと、八木くんの四角い感じが並べようとしました。

――実際、おふたりを並べてみたら。

SABU:すごくいい空気感でした。芝居もすごく上手でしたね。小澤(雄太)くんもヤクザ役が似合ってました。こんなに似合うとは思ってなかった。グラサンが効いててよかったですね。なんかイヤらしい感じがして。衣装合わせのときに初めて会ったんですけど、テツオを刺すのは彼にやってもらおうと決めました。

 小野塚(勇人)くんは芝居がピカイチ。誰よりも一番うまくて、抜き方がいい。余計な意識が一切なくて、スッと入れる人です。佐藤(寛太)くんはあのキャラクター通りでした。彼もすごく男前で、ラーメン屋に合うかなぁという心配もあったのですが、結果的によかったです。試写を観て一番喜んでいたのが、佐藤くん。「こんなの観たことない。すっごくおもしろかった」ってずっと言ってましたよ。

 野替(愁平)くんは、こういう人が付き人をやっているのがよかった。ヒロシとどこかカップルっぽい感じもあって。俺は役者のころ、舞台の付き人をよく見てきて、気遣いの凄さとかを知っているので、それをかなり説明してやってもらいました。

――野替さんの役が最後にフィーチャーされる場面もあります。あれはなぜ入れたのですか?

SABU:あのシーンも決定稿にはなかったんです。でももう1回出てきたほうが、続編にも繋がるかなと。彼の芝居も印象に残っていたので、もう1回最後に出したかったのもありました。ヒロシのマイクを拾うのですが、現場で、「ヒロシの歌を歌えるか」と聞いたら、「歌えます」っていうんですよ。(ロケ地の)北九州に着いてから、現場に来る途中に曲を聞かせてもらって、一生懸命覚えたらしくて。それで歌ってもらったら、ちゃんと歌えたんです。えらいなと思って、じゃあ、歌ってと。

――そうなんですね!

SABU:だからその日に急遽、歌ってもらって撮ったんです。

――それは驚きました。最初はメイン3人の出演という話から始まった本作ですが、あらためて劇団EXILEとのお仕事はいかがでしたか?

SABU:みんな本気なんですよね。全員、完璧にセリフが入って現場に来ている。それは当たり前のことですけれど、どこか身内の作品的な感覚で来られたら困るなと思っていたら、そんなことは全然なかった。全員本気で、こちらが特別な緊張感を作る必要はなかった。それぞれが自分のところで凹まないようにと、作品の全体をおもしろくしようと本気で向かってきてくれてよかったです。

――劇団EXILEは、日本のエンタメ界で独特のポジションにいるグループかと思います。日本の映画界に、こうしたグループがいるおもしろさは感じますか?

SABU:世間には、劇団EXILEなんて初めて聞いたという人もいると思うんです。でもピンではそれぞれ活躍しているというのがおもしろい。劇団といっても個人でやってるし、でも揃ったら不思議とグループなんですよね。不思議なカラーがあります。全員それぞれが主役にできるような粒がそろっていると思います。

――HIROさんは、いわゆる一般の映画プロデューサーとはやはり違いますか?

SABU:全然違いますね。HIROさんはクリエイター寄りなので話しやすいし、期待に応えたいと思わせる。応えるというか、ある意味裏切って、想像をさらに超えたくなる。なぜみんなHIROさんについて行くんだろうと思っていましたが、実際にお仕事すると、そういうことかと納得しました。HIROさんにしかない勘、センスを持っているんですよね。この映画のキャッチになっている“因果応報”という言葉を言い出したのもHIROさんです。試写を観たあとに、そこを前面に出したほうがいいと。

――もともと“因果応報”をテーマに意識していたわけではなかった?

SABU:意識していたわけではないです。宗教っぽい感じはもともと好きなんで、出ちゃうんですけど。でも因果応報と最初から頭にあると、それに縛られちゃうので。もちろんテーマというのはあります。基本的にいつも、人間の滑稽さや切なさを描くようにしています。あと、お客さんに変な問題を押し付けて終わるようなのはいいと思っていないので、おもしろかったなという感想の中に、そうした気になるものが散りばめられているのがいいと思っています。

――最後に読者にひと言お願いします。

SABU:今の日本の映画は、割と一面的なものが多いです。キラキラだったらずっとキラキラしてたり、サスペンスならそれ一色とか。『jam』は、演歌歌手が出てきたかと思えば、めちゃくちゃなアクションがあったり、いろんな色が入っているので、その構成を楽しんでもらえたらなと思います。

(取材・文=望月ふみ)

■公開情報
『jam』
全国公開中
エグゼクティブプロデューサー:EXILE HIRO
監督・脚本:SABU
出演:⻘柳翔、町⽥啓太、鈴⽊伸之、秋⼭真太郎、⼋⽊将康、⼩澤雄太、⼩野塚勇⼈、佐藤寛太、野替愁平、筒井真理⼦
配給:LDH PICTURES
2018/⽇本/カラー/シネスコサイズ/5.1ch/102分
(c)2018「jam」製作委員会
公式サイト:https://ldhpictures.co.jp/movie/jam/

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