桐谷健太演じる世良、さすがの商魂を発揮! 『まんぷく』ビジネスの本質を描いた第11週
さて、全国で勝負できるように味の改良も進められ、どんどん魅力的な商品になっていったダネイホン。それに続けて、世良は販売戦略だけではなく広告戦略にも打って出る。広告には萬平自身を起用し、宣伝放送の録音は福子に務めさせる。「美味しい、美味しい、ダネイホン。栄養満点ダネイホン。萬平印のダネイホン」。「美味しい」や「ダネイホン」といった言葉の繰り返しを盛り込むあたりは、いかにもプロらしい。さらに、広告を見た人の印象に残るような恰好を萬平にさせることで親しみを覚えさせる。認知度アップのための彼の戦略は、広告代理店さながらの腕前である。
商品を届ける場所の拡大、ダネイホンの味の改良の発案、視覚にも聴覚にも訴えかける広告戦略。マーケティングスキルをふんだんに発揮する世良の役回りは、萬平や福子にとって大きな武器とも言えよう。もちろん、萬平や福子も世良のように商売のアイデアを出してきたのであって、世良がすべてを担っているわけではない。例えば、初めに病院にダネイホンを売ることを提案したのは福子だった。ただ、今週のようなドラスチックな戦略は、世良流のやり方によるものが大きい。
私たちは、食べ物も、服も、家も、音楽も、医薬品も、知識も、“商品”として売買される世の中で暮らしている。それらを売る人々はみな、「美味しいものを食べてほしい」「いい音楽を聴いてほしい」「この薬で健康になってほしい」という理想を持ちつつも、売れないことには自分も家族も社員も食べていけない。それがビジネスというものである。塩を専売局に売るに際して、世良はズルをしたものの、彼はその後も萬平たちに何かと利する役割を果たしている。今後、世良がどのような振る舞いを見せるのかは分からないが、少なくとも言えることは、『まんぷく』は世良を単純に卑怯なだけの男として描こうとはしていないことだ。萬平的な才覚と、世良的な才覚、それぞれに光る場所が用意されているのだ。
(文=國重駿平)
■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)〜2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平/桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、瀬戸康史、中尾明慶、橋爪功、松坂慶子ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/