TVドラマは50代俳優の主戦場に ドラマ文化の全盛期を最も享受した世代の姿

TVドラマは50代俳優の主戦場に

 また、今の50代はバブル世代でもあり、昭和の年功序列・終身雇用を軸とするサラリーマン文化の恩恵を預かることができた最後の世代だ。対して、70年代生まれの団塊ジュニアは、バブル崩壊以降の就職氷河期を体験しており、正社員、派遣社員、フリーター、あるいはホリエモン(堀江貴文)のようにベンチャーでIT企業を起こした人々といった感じで就業形態が多様化しているため、ライフスタイルにおける一体感は薄い。2013年に放送された『半沢直樹』(TBS系)の原作は『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』で、主人公の半沢たちはバブル期に入社した銀行員だった。ドラマ版では若干、薄まった要素だが、原作小説では彼らバブル世代は、上の世代の(世の中を駄目にした)団塊の世代に対する強い反発があり、物語は一種の世代間闘争となっていた。この対立は、団塊世代とバブル世代が同じ価値観を共有できたからこそ成立した物語であり、下の世代からはどこか他人事に見える。

佐々木蔵之介と黒木瞳『黄昏流星群』(c)フジテレビ

 今の40代(団塊ジュニア)にとって、50代(バブル世代)はお兄さん的存在で、ある種の憧れの対象だったのだが、それだけに深い断絶も感じる。団塊ジュニアは、戦後日本の核家族的なライフスタイルや企業形態はもちろんのこと、テレビ文化や雑誌文化といった戦後カルチャーの伝統をバブル世代から継承することはできても、その伝統は自分たちで打ち止めではないかと思う。

 下の世代はネットやスマホが当たり前のデジタルネイティブで、すでに昭和日本的なルールとはまったく違う価値観を生きている。彼らの中心はYouTube等の動画サイトや、InstagramやTwitter等のSNSであり、テレビは自分たちとは無関係な目上の人たちが出るメディアだという意識ではないかと思う。

沢口靖子『科捜研の女 season18』より(c)テレビ朝日

 団塊ジュニアの強みは、テレビや雑誌等の旧メディアと、インターネット普及以降の新メディアの両方が理解できることだと思っていたが、近年の断絶を見ていると、もしかしたら、どちらにも居場所がないのかもしれない。50代の俳優が現役で活躍する姿は頼もしいが、自分たちの世代が彼らの年齢になった時に、同じように頑張れるのかと考えると気が重くなる。やれることはやるつもりだが、あまり楽観視はできないというのが正直な気持ちである。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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