『中学聖日記』が描く“人が人を好きになること” 離れ離れになった有村架純と岡田健史の恋の行方

『中学聖日記』有村架純と岡田健史の恋の行方

“ドラマのTBS”を支える新井順子×塚原あゆ子の強力タッグ

 また、本作の魅力を語る上でもう一つ語っておきたいのが、その制作陣だ。プロデュースは、『夜行観覧車』『Nのために』『リバース』『アンナチュラル』(すべてTBS系)の新井順子。メイン監督を務めるのも、この4作を新井と共に手がけてきた塚原あゆ子だ。4作はいずれもその実験的な映像マジックとスリリングな展開で視聴者を惹きつけてきた。

 本作は前4作のようなミステリーではないが、ある種サスペンス的な緊張感が張りつめているのは、新井×塚原コンビのなせるワザ。たとえば、未来の視点から過去を振り返り物語を進めていく手法は、『夜行観覧車』や『Nのために』でも使われた“お家芸”だ。すでに起きてしまったことを述懐するという語り口は自然と悲劇の予感を生み、この先に悲しい結末が待っているのだと想像させられることで、何気ないシーンでも視聴者はきゅっと胸を締めつけられる。

 随所に挟まれるモノクロのモノローグも効果的だ。あの瞬間に響くSEは錠を下ろす音のようにも聞こえれば、錠を開く音にもとれる。聖と晶は心にあるものを封じ込めようとしているのか。それとも解き放とうとしているのか。視聴者の想像は豊かに膨らむ。

 さらに、透明感溢れる映像美とロケーションも、本作のピュアな世界観に多大な貢献を果たしている。青々とした田園風景。画面から漂ってくる潮の香り。どこか『Nのために』の青景島を連想させる穏やかな自然の景色が、聖と晶の恋にノスタルジーのカーテンをかける。

 第1話は、晶の告白。第2話は、晶と勝太郎の鉢合わせ。第3話は、聖の告白。第4話は、地獄の修羅場。そして第5話は3年後の晶と、毎回次が気になる引きの上手さも、『リバース』など二転三転するミステリーを手がけてきた新井×塚原らしいつくり方と言える。

 何より中学生との恋という、扇情的に描こうと思えばいくらでも描けるテーマを、しっかり腰を据えて掘り下げている誠実さがいい。いよいよここで折り返し地点。どうか最後まで「人が人を好きになること」とその先にあるものを丁寧に描き切ってほしい。

■横川良明
ライター。1983年生まれ。映像・演劇を問わずエンターテイメントを中心に広く取材・執筆。人生で一番影響を受けたドラマは野島伸司の『未成年』。Twitter:@fudge_2002

■公開情報
火曜ドラマ『中学聖日記』
TBS系にて、毎週火曜22:00~23:07放送
出演:有村架純、岡田健史、町田啓太、マキタスポーツ、夏木マリ、友近、吉田羊、夏川結衣、中山咲月
原作:かわかみじゅんこ『中学聖日記』(祥伝社フィールコミックス)
脚本:金子ありさ
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、坪井敏雄
主題歌:Uru「プロローグ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/chugakuseinikki_tbs/

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