プリキュア映画の“偉業” 市場規模が狭い中、なぜ歴代最高ヒットでスタートできた?

プリキュア映画、大ヒットスタートの理由

興行収入のメインは子どもとその保護者

 では、今作の絶好調の要因は何なのでしょうか?

 2018年は「プリキュア15周年」記念の年、ということで東映アニメーションを始めとしたプリキュア製作関係者が、東京の地下鉄駅に広告を出したり、原宿に限定ショップを出店したり、2月1日を「プリキュア記念日」と設定する働きかけをしたり、10月には横浜で大きなパレードを実施、ギネス認定申請など様々な施策を行ってきました。

 様々な媒体での「プリキュアコンテンツの露出増」による認知の増加と共に、歴代55人ものプリキュアオールスターズが映画に出演するという話題性が、子どもたちとその保護者はもちろんのこと、プリキュアをかつて観ていた女性、その他多くのオトナのファンを引き付けたためと思われます(自分の観測範囲では、社会人女性はもちろんのこと、中高生、大学生など一度プリキュアを卒業した学生も数多く劇場に足を運んでいたようです)。ただ、興行収入を動員数で割った客単価でみると、やはり興収のメインとなっているのは「子どもとその保護者」であることも事実であると思われます。

 つまり今の現役プリキュアファンの子供達も、過去プリキュアファンだった学生も、ずっとプリキュアをみている社会人も、プリキュアに関わったことのある人全員が、大いに盛り上がった点がこの成績の大幅増に繋がったものと思われます。

プリキュア映画が日本映画の将来を担う?

 プリキュア映画は「子どもが初めて観る映画、映画の原体験」としての機能もあると思います。

 今までのプリキュア映画で歴代最高の興行収入は2010年春に公開された『映画プリキュアオールスターズDX2 希望の光☆レインボージュエルを守れ!』の、興行収入11.5億円、動員107万人です(参考:日本映画製作者連盟)。

 今作『HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュアオールスターズメモリーズ』は、その初動数値の高さから、『オールスターズDX2』を上回り歴代最高の興行収入になるのは確実かと思われます。

 この結果は、この先の「プリキュア映画」にとってひとつのターニングポイントになるのではないかと自分は思っています。

 プリキュアの映画は、近年では春と秋、1年に2回というハイペースで作品が作られ続けているにも関わらず、子どもたちにこの14年間ずっと支持され続けています。2006年の『おしゃれ魔女 ラブandベリー』の女児への空前の大ヒット、2014年の『妖怪ウォッチ』『アナと雪の女王』の大流行による興行収入の落ち込みからも見事に復活し、近年は年を追うごとに成績がアップしてきています。それはプリキュアというコンテンツがずっと子どもたちに寄り添ってきたからなのだと思います。

 そんな中、今作ではさらに例年の2倍近い子どもたちが劇場に駆け付けているのです。

 「劇場に足を運んで、応援すると憧れのキャラクターが活躍する」という体験をした子どもたちは、きっと「映画というコンテンツ」自体を好きになってくれるのではないかと思うのです。「プリキュア映画」で映画というコンテンツの楽しさを知った子どもたちが、将来たくさんの映画を観に行くようになってくれると良いですよね。

 そう考えると「プリキュア映画の成功」は日本映画の将来をも担っている、といっても良いのではないかと僕は思うのです。

■kasumi
「プリキュアの数字ブログ」管理人。愛知県在住の会社員。2児の父。WEBメディアねとらぼでのプリキュア記事連載を始め、様々なWEB媒体でプリキュアに関する記事を執筆中。

■公開情報
『映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』
全国公開中
原作:東堂いづみ
監督:宮本浩史
脚本:香村純子
総作画監督:稲上晃
音楽:林ゆうき
美術監督:杉本智美
BGコンセプトアーティスト:澤井富士彦
CGディレクター:カトウヤスヒロ
CGアニメーションスーパーバイザー:金井弘樹
色彩設計:竹澤聡
撮影監督:石塚恵子、高橋賢司(※「高」の字は、「はしごだか」)
配給:東映
(c)2018 映画HUGっと!プリキュア製作委員会
公式サイト:http://www.precure-movie.com/

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