『アベンジャーズ4』で卒業 キャプテン・アメリカを人気者にしたクリス・エヴァンスの功績

キャップ役クリス・エヴァンスの功績

 1作目の『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』で、スティーブがなぜスーパーソルジャー実験(これが後のキャプテン・アメリカを生む)の候補に選ばれたのかを科学者が説明するシーンで、「君は良い心の持ち主だからだ」というセリフがあります。このシーンで、スティーブと僕がクリスに感じたイメージがダブリました。

 また2作目の『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(僕にとって本作がMCUの最高傑作)の中で、「体制を守るため人々を監視すべきだ」みたいな計画が進んでいることを知った時、スティーブが「そんなことは許されない」と激しく怒ります。このシーンは、“自由を守るヒーローとしてのキャプテン・アメリカ”というキャラの本質をついた名シーンです。クリスのあのまっすぐな目でこのセリフを言われるとより心に刺さってきます。

 一方アベンジャーズ映画では、“オラオラ”感がないクリスだからこそ、俺についてこい的オーラを出すのではなく、自然と皆が集まってくるタイプのリーダーになったのでしょう。

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(c)2016 Marvel.

 3作目の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』ですが、これは予想外の作品でした。僕は『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』で提示されていた”体制の維持と個人の自由”みたいなテーマがもっと深堀されると思っていました。つまりヒーローの行為とは個人の良心に従うか、それとももっと公的なものであるべきか、というディスカッション・ドラマになるだろうと。本作は前半は確かにそういう感じなのですが、実はキャプテン・アメリカことスティーブの友情の物語です。クライマックスでスティーブは“キャプテン・アメリカ”ではなく“スティーブ・ロジャース”として友を守るため戦います。それまでの『キャプテン・アメリカ』シリーズ2作、『アベンジャーズ』シリーズ2作を通じて、ずっと自分を犠牲にしていたスティーブが、『シビル・ウォー』では初めて自分のために立ち上がるのです。ラストでスティーブは、あの盾を置いていきます。キャプテン・アメリカではなくスティーブとして戦ってしまった以上、もうキャプテン・アメリカとしての資格がないからです。

 本作の続きである『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』では、キャプテン・アメリカではなくスティーブ・ロジャースとして戦います。なのでグルートに対し「僕はキャプテン・アメリカ」ではなく「僕はスティーブ・ロジャース」と名乗るのです。

 そして次の『アベンジャーズ4』で、クリスはMCUから離れることを表明しています。繰り返しになりますが、アメリカのための“愛国心ヒーロー”と思われていたキャプテン・アメリカがみんなのための“愛されヒーロー”になったのは、クリスが演じたからです。『アベンジャーズ4』に期待したいのは、いま“スティーブ・ロジャース”として活躍している彼が、“キャプテン・アメリカ”に戻ってくれることです。もう一度マスク越しの、クリスのあの目を見たいのです。

■杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画に関するコラム等を『スクリーン』誌、『DVD&動画配信でーた』誌、劇場パンフレット等で担当。サンディエゴ・コミコンにも毎夏参加。現地から日本のニュース・サイトへのレポートも手掛ける。東京コミコンにてスタン・リーが登壇したスパイダーマンのステージのMCもつとめた。エマ・ストーンに「あなた日本のスパイダーマンね」と言われたことが自慢。現在発売中の「アメコミ・フロント・ライン」の執筆にも参加。Twitter

■リリース情報
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』
MovieNEX発売中
監督:アンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソ
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:ロバート・ダウニーJr.、クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、ベネディクト・カンバーバッチ、ドン・チードル、トム・ホランド、チャドウィック・ボーズマン、クリス・プラット
販売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
(c)2018 MARVEL
公式サイト: marvel-japan.jp/avengers-iw

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