力強さのベースにある“女の子”の感性とテーマ 山戸結希監督の才能の謎に迫る

山戸結希監督の才能の謎を考察

 芸術に身を捧げるには、ときに経済的に困窮する覚悟をしながらも、“遊び”の心を持たなければならない。つくり手自身が感動したり面白がる心を持たなければ、受け手の心を揺り動かすことはできないのだ。歴史的に、いつまでも子どもであることを社会のなかで許されてきた男に比べ、女はいろいろな意味で歴史的にそれが許されなかった部分がある。童謡詩人の金子みすゞなどは、その代表的な被害者である。

 このような慣習は現代にも根深く残存する。ことに日本では、大人になることは社会の常識を受け入れることと同義と考えられているため、社会そのものが封建的であれば、女の子を卒業したときに、その創造性や才能は蹂躙されてしまうことになる。そんな社会に生きる女性は、「女の子」という短い期間でしか、才能の羽根を十分に広げることができない。女性が個人でそこに対抗する方法は、もはや“女の子を卒業しない”ということしかないのかもしれない。

『離ればなれの花々へ』(『21世紀の女の子』より)

 山戸監督が描いてきた、地方の女子高生などは、まさに環境によって輝きが失われていくだろう存在であり、そこで抗い戦っている女の子たちである。だから、女の子が女の子の感性で映画を作るという『21世紀の女の子』という企画を、山戸監督が主導するというのは、よく理解できる流れだといえよう。

 山戸結希監督作の力強さのベースにあるのは、女の子の感性であり、そのテーマにの中心に据えられているのもまた、「女の子」である。女の子が女の子を描く。このシステムによって山戸監督は、少なくともこの分野において無敵の状態でいられるし、この姿勢がブレない限り、重要な作品を作り続けられるだろう。そして、そんな女の子の姿を見せることで、後進の女の子たちの道をも切り拓いているといえるのだ。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『21世紀の女の子』
2019年新春公開
企画・プロデュース:山戸結希
エグゼクティブ・プロデューサー:平沢克祥、長井龍
コプロデューサー:小野光輔、平林勉、三谷一夫
製作:21世紀の女の子製作委員会(ABCライツビジネス、Vap)
製作・配給協力:映画24区、和エンタテインメント
配給:ABCライツビジネス
(c)21世紀の女の子製作委員会(ABCライツビジネス、VAP)
公式サイト:http://21st-century-girl.com/

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