秋ドラマのポイントは“獣”? 『けもなれ』『大恋愛』『中学聖日記』女性脚本家たちの狙い
そこで、ある事実に気づいた。ここまで挙げてきたドラマ、そのすべてが女性脚本家の手によるものだということだ。『獣になれない私たち』の野木亜紀子はもちろん、『中学聖日記』の金子ありさ、『黄昏流星群』の浅野妙子、『大恋愛』の大石静、さらには『僕らは奇跡でできている』の橋部敦子……いずれも女性脚本家であり、とりわけ『ラブジェネレーション』(フジテレビ系)などで知られる浅野妙子、『セカンドバージン』(NHK総合)などで知られる大石静は、NHKの朝ドラ執筆経験もある、この道のベテランと言ってよい人物だ。漫画原作とオリジナルという違いはあれど、ベテラン女性脚本家2人が今の時代に描き出す珠玉のラブストーリー。それに対して、『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』(TBS系)を経て、『獣になれない私たち』へと至った野木亜紀子は、70年代生まれの中堅脚本家。ひょっとするとそこには、世代間ギャップみたいなものも、存在しているのだろうか。
その意味で、今後の展開が少々気になるのは、『中学聖日記』である。一見すると、『黄昏流星群』や『大恋愛』と同じく、ある種の“恋愛至上主義”に基づいた作品に思える本作だが、原作漫画の作者であるかわかみじゅんこ、脚本の金子ありさ、そして演出を担当する塚原あゆ子……彼女たちは、いずれも70年代生まれであり、言わば野木と同世代のクリエイターたちである(実際、塚原は『アンナチュラル』で野木とタッグを組んでいる)。その彼女たちが、上の世代を同じような“禁断の愛”、あるいは“大恋愛”を、そのままの形で描き出すとは、あまり思えないのだが……有村架純演じる主人公の“純愛”とは、果たして何を意味するのだろうか。そして、町田啓太演じる主人公の婚約者の上司であり、自ら“バイセクシャル”であることを公言する“原口律”(吉田羊)など気になる登場人物たちは、主人公の“純愛”に、どのように絡んでくるのだろうか。それぞれの物語の推移とその行き着く先を、視聴率の数字ともども、引き続きウォッチしていきたいと思う。
■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「リアルサウンド」「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。Twtter
■放送情報
『獣になれない私たち』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:新垣結衣、松田龍平、田中圭、黒木華、菊地凛子、田中美佐子、松尾貴史、山内圭哉、犬飼貴丈、伊藤沙莉、近藤公園、一ノ瀬ワタル
脚本:野木亜紀子
演出:水田伸生
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:松本京子、大塚英治
協力プロデューサー:鈴木亜希乃
制作会社:ケイファクトリー
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/kemonare/
『中学聖日記』
TBS系にて、毎週火曜22:00~23:07放送
出演:有村架純、岡田健史、町田啓太、マキタスポーツ、夏木マリ、友近、吉田羊、夏川結衣、中山咲月
原作:かわかみじゅんこ『中学聖日記』(祥伝社フィールコミックス)
脚本:金子ありさ
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、坪井敏雄
主題歌:Uru「プロローグ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/chugakuseinikki_tbs/
『大恋愛~僕を忘れる君と』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54
脚本:大石静
プロデューサー:宮崎真佐子、佐藤敦司
演出:金子文紀、岡本伸吾、棚澤孝義
出演:戸田恵梨香、ムロツヨシ、富澤たけし(サンドウィッチマン)、杉野遥亮、小篠恵奈、黒川智花、橋爪淳、夏樹陽子、草刈民代、松岡昌宏
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/dairenai_tbs/
『僕らは奇跡でできている』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
出演:高橋一生、榮倉奈々、要潤、児嶋一哉、西畑大吾(関西ジャニーズJr.)、矢作穂香、北香那、広田亮平、田中泯、トリンドル玲奈、阿南健治、戸田恵子、小林薫
脚本:橋部敦子
音楽:兼松衆、田渕夏海、中村巴奈重、櫻井美希
演出:河野圭太(共同テレビ)、星野和成(メディアミックス・ジャパン)、坂本栄隆
プロデューサー:豊福陽子(カンテレ) 、千葉行利(ケイファクトリー)、宮川晶(ケイファクトリー)
主題歌:SUPER BEAVER「予感」([NOiD] / murffin discs)
オープニング曲:Shiggy Jr.「ピュアなソルジャー」(ビクターエンタテインメント)
制作協力:ケイファクトリー
制作著作:カンテレ
(c)関西テレビ
公式サイト:https://www.ktv.jp/bokura/index.html