『ここは退屈迎えに来て』インタビュー
橋本愛が語る、『告白』と上京当時の思い出 「日活撮影所に行くと胃が痛くなってしまって」
『ここは退屈迎えに来て』が10月19日に公開された。山内マリコの同名小説を映画化した本作は、2004年の高校時代から2013年までの時間軸の上で、みんなの憧れの的だった椎名くんを柱にキャラクターを交差させながら描く、痛く切ない群像劇。
今回リアルサウンド映画部では、何者かになりたくて東京に出たけれど実家に戻った27歳の「私」を演じた橋本愛にインタビュー。もともと好きだったという原作への思いや、過去と向き合うことについて語ってもらった。
「一番重要だったのは、椎名くんとの心の距離感」
ーー『dele』(テレビ朝日系)にゲスト出演されたときもそうでしたが、今回の「私」は27歳という橋本さんより年上の役でしたね。
橋本愛(以下、橋本):「私」役は27歳という設定ですが、撮影したのはわたしが21歳にのときだったので、当時6歳の差がありました。この作品の中には、高校時代の「私」も出てくるので、演じ分けるにあたって、ほんの少しだけバレない程度に声のトーンや質感を意識しています。どちらかというと「私」というのは普遍の人というか、いい意味でも不本意な意味でも、あまり変わらない女性だったので、わかりやすく変化を表現しようという計画はありません。27歳の役だけど21歳のわたしが演じられると思った人がいるのでしょうから、じゃあもうそう見えるのだろうと信じるのみでした。でも意外とアイラインを入れるだけでもちょっと老けたりして、顔って面白いなと思いながら演じていました。
ーー橋本さんは、もともと原作が好きだったと聞いています。
橋本:小説は発売当時に読者として読んでいました。今回のお話をいただいたときに、この小説が映画化するんだと嬉しくて、さらに自分がもしかしたら関われるかも知れないと思ったときは、心踊りましたね。
ーー当時は「私」に思い入れはありましたか?
橋本:「私」というのは大人で、ある程度のバランスを獲得している女性だったので、読んでいてインパクトが強かったのは映画で門脇麦ちゃんが演じている「あたし」でした。早朝の静かな空気の青みがかった空の下を1人で歩いて、「誰か〜」と叫んだらロシア人と会うっていうのは小説としても「なんだこれ」という面白さがありましたし、その空気感はすごく知っていて、好きだなと思ったのは覚えています。原作は冬だったのでキーンとした鼻に来る冷たさがあったのですが、映画の場合は夏なんだけどちょっとした肌寒さみたいなものがあって、朝焼けというか夜明けというか、あの絶妙な情景が好きでした。
ーー今回「私」を演じて、大切にしたことはなんでしょうか?
橋本:一番重要だったのは、椎名くん(成田凌)との心の距離感。サツキちゃん(柳ゆり菜)は、ずどんと地元から動いていないから、あのゲーセンで遊んだ1日とか椎名くんのようなスターの存在がずっしり心に残っている女の子でしたけど、「私」は結構行ったり来たりというか、椎名くんが色んな場所に点在しています。「私」にとっての椎名くんは、最初は別に固執もしていないけれど、とあるシーンでの言葉にある程度のショックを受けるくらいの存在ではあるんですね。2人の距離感がシーンごとに結構違っていて、このシーンはここにいるけれど、あのシーンはこっちだな、とか色々工夫しました。特にプールのシーンが1番ときめいたのは覚えています。面白いのは、「私」が椎名くんがいない場所で彼にときめいているところです。新保くん(渡辺大知)と話していて、「彼女に見えた」っていうのがすごく嬉しいっていう変な女の子なんですよね。