町田啓太が語る『西郷どん』小松帯刀役への挑戦 「二度とできない経験をさせてもらいました」

鈴木亮平は本当に尊敬できる俳優

――そして、そのあとドラマの現場に入って。鈴木亮平さんとは、以前共演したことがあるんですよね?

町田:はい。亮平さんとは、前に一度、『花子とアン』で共演させていただいたんですけど、そこから共演がありませんでした。今回、久しぶりにお会いしたら、すっかり胸板が厚くなっていて、本当にビックリしました(笑)。「えっ、こんなに」っていうぐらい、見た目の雰囲気から何から変わっていて。ここまでちゃんと体型を変えて役に臨むのは、やっぱり亮平さんならではだし、本当に俳優として尊敬できる人だなと改めて思いました。亮平さんは、まわりの方々に対する気遣いが、本当に素晴らしいんです。すごく“背負っている”なあっていう感じがして。

――“座長感”がありましたか。

町田:もちろん。ただ、それを別に前面に出しているわけじゃなくて、亮平さんがひたむきにやっている姿を見て、みんなが亮平さんに付いていこうと思うんです。僕が入ったときには、そういうチームができあがっていたので、そこに入れたっていうのは、自分にとってもすごいありがたかったですね。

――町田さんは中盤からの登場(第21回~)なので、そのときにはもう、すっかりチームができあがっていたんですね。

町田:僕が入ったのは、本編で言ったら“奄美大島編”の撮影が終わったあたりのタイミングだったので、だいぶみなさん、ホットな感じになっていて(笑)。スタッフさんも含めて、すっかり関係性ができあがっていたんですよね。そういう温かい現場に参加させてもらえたことは、すごく嬉しかったし、亮平さんとこういった形でご一緒させていただけたのは、単純に嬉しかったですね。

(c)NHK

――とはいえ、町田さんの役どころは、島を駆け回るようなホットな役ではありません。

町田:そうですね(笑)。やっぱり、家老職というところで、亮平さん演じる西郷と、瑛太さん演じる大久保の上司というか、下級武士と言われる方々の上に立つような立場の人間ではあるんですけど、その上には青木崇高さん演じる島津久光だったりがいて……かなり板挟みの状態だったとは思うんですよね。

――西郷や大久保に、「まずは落ち着け」と言うような立場の人ですからね。

町田:そうなんですよ。でも、小松帯刀もまた、そんな彼らの熱に動かされたひとりではあったと思うんです。もともと能力は高い人でしたけど、西郷や大久保と、かなり親密な関係を築いていたというのは、史実にもたくさん残っています。でも、久光さんからも、いろいろ言われたり、薩摩藩の家老として、やらなきゃいけないこと、守らなければいけないことっていうのも、やっぱりあって。だから、現代に置き換えると、ちょっと中間管理職みたいなところもあったのかなと感じます。それも含めて、演じていて、すごく面白い役でした。

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――全体が小松帯刀の物語ならともかく、途中から登場して、そういう説得力を持たせるという意味では、かなり難しい役だったのでは?

町田:そうですね。ドラマ自体は西郷の物語なので、西郷たちの行動を中心に描いていくんですけど、その裏で小松帯刀が何をしていたかっていうのは、劇中ではあまり描かれません。史実的にもいろいろな解釈があるんですよね。だから、そのあたりは監督といろいろ話しながら、ドラマに描かれない部分も、ちゃんと自分の中で埋めていくように心がけました。

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――いわゆる薩長同盟のときも、劇中で描かれていた以上に、裏で小松帯刀が頑張っていたようです。

町田:薩長同盟は、京都の小松亭で行われたわけですし、そこにいちばん尽力した人物が小松帯刀だっていうふうに言われたりもしているので。一橋慶喜との繋がりも、全部小松帯刀がやっていたと。だから、西郷や大久保より若いながらも、そうやって背負っているものが大きい人物に見えないと、多分説得力がゼロになってしまうなとは思っていました。登場したての頃から、そういういで立ちでいようっていうのは、かなり意識していましたね。

――とはいえ、実年齢で考えると、町田さんと小松帯刀って、ほとんど同い年なんですよね。それも不思議な縁だなと。

町田:そうなんですよ。もちろん、当時の28歳と今の28歳は、雲泥の差があると思います。今で言うと50代ぐらいの達観したところがあったんじゃないかと思っていて。当時は、寿命とかも短かったでしょうし、そもそも幼少の頃からやっていることの量とか質が、違っていたと思うんです。年齢は同じですけど、精神はもう遥か先を行っていた方なんだろうなと思いました。

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