真面目に生きてきた人ほど佐々木蔵之介に共感してしまう? 『黄昏流星群』が描くやるせなさと孤独

 仕事のことで悩み苦しんでいても、家族には心配かけたくないためになかなか心の内を打ち明けることができない主人公・完治(佐々木蔵之介)に対して、妻・真璃子(中山美穂)と娘・美咲(石川恋)は何かにつけて浮気を疑う。道を歩いていても肩身が狭く、長年務めあげた会社にも家庭にも居場所がない。「1人で」という言葉を連呼する彼に、本当の意味で寄り添ってくれる人はいない。

 一方、真璃子は、仕事中毒の夫の不在を娘にかまけることで埋めてきた。そのため、「娘が恋人」、一卵性親子と言うと聴こえがいいが、大分依存気味である。完治が運命的な出会いを果たす栞(黒木瞳)もまた、何か大きな事情を抱えていて、孤独な雰囲気を漂わせている。

 人生の折り返し地点を過ぎ、それぞれが何かしらの岐路に立たされる時、偶然新しい誰かに出会い、奇跡のような光景を共有してしまったら、もしかしたら人は、それに縋ってしまうのかもしれない。世間の風当たりが吹雪のように冷たく激しいのなら、2人して暖かい部屋に逃げ込んでしまうこともあるかもしれない。

 順調に安定した人生を歩んできた「理屈にあわないことはしない」真面目な完治が、なぜ道ならぬ恋に突き進んでしまうのか。「あたかも黄昏の空に飛び込んでくる流星のように、最後の輝きとなるかもしれない」という言葉通りに、彼らが目を離せなくなる、白い雪景色の中をくるくると舞う赤い傘と、流れ星の一瞬の美しい煌きが、「これが最後」と燃え上がる感情に押し流されようとする彼らの恋そのもののようにも見えてくる。そんな、まだまだ落ち着けない大人たちの、しっとりと燃え広がる恋物語である。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■放送情報
木曜劇場『黄昏流星群~人生折り返し、恋をした~』
フジテレビ系にて10月11日(木)スタート 毎週木曜22:00~22:54放送
出演:佐々木蔵之介、中山美穂、藤井流星(ジャニーズWEST)、石川恋、礼二(中川家)、八木亜希子、小野武彦、黒木瞳ほか
原作:弘兼憲史 『黄昏流星群』(小学館『ビッグコミックオリジナル』連載中)
脚本:浅野妙子
プロデュース:高田雄貴
演出:平野眞、林徹、森脇智延
制作著作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/tasogare/

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