予想外のエンディングに 松本穂香主演『この世界の片隅に』が遺した“現代へと通じるメッセージ”

『この世界の片隅に』予想外のエンディングに

 戦争が終わり配給も途絶え始め、闇市にGHQ。戦後の何もかもが足りない厳しい暮らしの中で、すず(松本穂香)や北條家の人々、そして呉の人々は前向きに生きつづけていた。しかし、台風の日に届いた滲んだ手紙以降連絡がない家族の消息にやきもきするすず。そんな折、草津のイト(宮本信子)から手紙が届き、すずはひとりで広島へと向かうのだ。

 9月16日に放送されたTBS系列日曜劇場『この世界の片隅に』最終話。これまで原作やアニメ映画版と同様に淡々とエピソードを積み重ねながら構築されてきたこの物語は、最後の最後までそれを貫いたと同時に、現代へと通じるメッセージを登場人物の言葉でストレートに伝える。その中で最も鋭く心に突き刺さるのは、久々の登場となったイトが悔しさを込めながら語る「できることは、生きることだけじゃ」という台詞ではないだろうか。

 8月6日に出かけてから行方がわからないすずの母キセノ(仙道敦子)に、キセノを探しに広島の町を訪れ原爆症に倒れて亡くなった父・十郎(ドロンズ石本)、同じように原爆症で腕にできた内出血に悩まされながら寝込む妹・すみ(久保田紗友)。そして戦死した兄の要一であったり、はたまた不発弾で亡くなった晴美であったり、多くの人々の悔しさを抱えながら、前向きに生きていくことが当時の人々に課せられた使命だったのかもしれない。

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