生きづらい現代に“モフモフ”を 『プーと大人になった僕』『パディントン2』愛され続ける2匹のクマ

『プーさん』『パディントン』クマの魅力

 予告編でも話題になっていた、「ぼくは“何もしない”を毎日やっているよ」というプーの言葉。プーの言葉のように捉えられがちだが、実は「ぼくがいちばんしていたいのは、なにもしないでいることさ」というクリストファー・ロビンの発言が発端で、プーは何十年もの間大好きなクリストファー・ロビンとの約束をずっと守り続けていた切ない事実が反映されている。

 そう思えば、“モフモフ”のクマというのは単に可愛いだけではなく、人間よりも遥かに義理人情に厚いと言えるのではないだろうか。『パディントン2』でのパディントンは、故郷・ペルーにいる育て親のルーシーおばさんの100歳の誕生日をお祝いするために、アンティークショップで見つけた飛び出す絵本を贈ろうと試みる。しかし、あまりに高価でパディントンには手が届かない。そこで、まさかのアルバイトを始めるというのだ。

『パディントン2』(c)2017 STUDIOCANAL S.A.S All Rights Reserved.

 始めは失敗続きのアルバイトだったが、徐々に自慢の“モフモフ”を活かせるようになり、貯金計画は大成功。そんな矢先、何者かが絵本を盗んだ上に、犯人を捕まえようとしたパディントンに“絵本窃盗”の濡れ衣が着せられてしまう。でも、パディントンが素晴らしいのは、例えどんな不幸が降りかかろうとも、ルーシーおばさんのためを思って、必死に乗り越えようと諦めないことだ。絵本が盗まれたから別の物を探すのではなく、大好きな人が喜んでくれる一番のものを贈りたい。そんなパディントンの切なる願いが、周りの人々の心をも変えていく。

 2014年に公開された『パディントン』では“個性を受け入れる大切さ”が描かれていたが、その続編となる『パディントン2』では“人を見かけで判断しない”という強いメッセージが込められている。『ハリー・ポッター』シリーズの名プロデューサーであるデヴィッド・ハイマンが参加していることもあり、移動遊園地や汽車などの夢のあるビジュアル面も素晴らしいが、世界が抱える問題の核心に迫った大人も考えさせられるストーリーも本作の魅力の1つだろう。

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