佐藤健の告白に詰まった麦田の成長 『義母と娘のブルース』最終回はドラマオリジナルの“奇跡”に?

 目の前の人と、自分の人生を重ねて見る。それが、小さな奇跡を見つける第一歩だ。章と亜希子を近づけた大きなきっかけは、章が親を亡くしたみゆきに親孝行できていない自分を投影したことだった。親から逃げるように職を転々としていた章は麦田ベーカリーに戻る。そして、とても経営難に陥ったその店は、亜希子にとって高校生のみゆき(上白石萌歌)に親の背中を見せる絶好の場所になる。このめぐり合わせをドラマのご都合主義としてみるか、それとも今この瞬間も自分に起こりうるかもしれないと重ねて見るか。そこでも、小さな奇跡を引き寄せる力が大きく変わってきそうだ。

 「9年だもん、好きな人のひとりくらいできたって当たり前だよね」。良一の旅立ちから9年という月日が経った。人は大きくは変わらない。だが、その間に繰り返された多くの出会いと別れで、人間関係は確実に変化していく。亜希子に恋い焦がれていたあの田口(浅利陽介) も結婚するのだから。みゆきは複雑な想いを抱えながらも亜希子の幸せを願い、章の恋を応援する。当の亜希子の気持ちは置き去りではあるものの「全力でみゆきの父ちゃんになるぞ!」と、ふたりが盛り上がる姿につい頬が緩んでしまう。人を好きになることは、なんて生活を明るく照らすのだろう。

 「やれってんなら、米でパン焼きます。やれってんならパンで米作ったっていいっす。だから俺に一生お世話されてください」。ご飯党の亜希子に、パン職人としてありったけの愛をぶつけた告白。形ばかり美しかった章のパンは、亜希子と出会ってバリエーション豊かになった。それは、章自身の人生にも言えること。外見ばかりのイケメンから、味のある男性へ。人と深く知り合えば、ときに思いもよらぬ化学反応が生まれる。そして人の成長こそ、 最大の奇跡だ。ハイタッチか握手か、長い時間を共に過ごすうちにふたりの息も合ってきた。それは、章はもちろん亜希子自身の成長の証でもある。

 手を取り合うという小さな奇跡を繰り返し、 人生はあっという間に過ぎていく。気づけばこのドラマも、次回が最終回。果たして、章の告白に亜希子はどう返事をしたのか? 原作通りの結末なのか、それともドラマオリジナルの奇跡が描かれるのか。きっと見終えた後、多くの人が“このドラマと出会えてよかった”と思える小さな奇跡が待っているに違いない。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
火曜ドラマ『義母と娘のブルース』
TBS系にて、毎週火曜22:00~23:07放送
出演:綾瀬はるか、竹野内豊、佐藤健、横溝菜帆、川村陽介、橋本真実、真凛、奥山佳恵、浅利陽介、浅野和之、麻生祐未
原作:『義母と娘のブルース』(ぶんか社刊)桜沢鈴
脚本:森下佳子
プロデュース:飯田和孝、大形美佑葵
演出:平川雄一朗、中前勇児
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/gibomusu_blues/

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